発達障害・精神障害で退職するとき、職場への伝え方と次の準備【5ステップ】

発達障害・精神障害で退職するとき、職場への伝え方と次の準備【5ステップ】 働き続ける・職場の悩み

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「もう限界かもしれない」と感じながら、それでも発達障害や精神障害を抱えて退職を考えるとき、一番怖いのは「どう伝えればいいかわからない」という瞬間ではないでしょうか。上司への伝え方、退職理由の書き方、次の支援につなぐ準備——やるべきことが頭の中でぐるぐるしていて、一歩も動けなくなることはよくあります。

この記事では、発達障害・精神障害で退職を決断した後に直面する「上司への伝え方」「退職届・退職理由の例文」「次の就労支援や失業給付への準備」を、5つのステップで順を追って整理します。ADHDや適応障害、ASDなど特性が違っても横断的に使えるガイドとして設計していますので、今の自分に必要なところだけ参照してください。

全体の流れ

退職を決めてから次の就労先・支援につながるまでの大まかな流れは以下のとおりです。人によって順序が前後する場合もありますが、目安として確認しておきましょう。

  1. ステップ1:退職を決断する前に確認する3つのこと(1〜2週間)
  2. ステップ2:上司への伝え方を準備する(面談設定まで数日〜1週間)
  3. ステップ3:退職届・退職理由を書く(面談後〜退職日までの間)
  4. ステップ4:退職後の手続きをまとめておく(退職日前後〜1か月)
  5. ステップ5:次の支援・就職に向けて動き出す(退職後なるべく早く)

ステップ1:退職を決断する前に確認する3つのこと

やること

退職の意思が固まりかけているとき、まず以下の3点を整理しておくと、次のステップがスムーズになります。焦って動く必要はありませんが、確認しないまま進むと後悔しやすいポイントです。

  • ①合理的配慮を求めたことがあるか
    業務内容・勤務時間・指示の出し方など、職場に配慮を申し出たことがない場合、退職前に一度相談することで状況が改善するケースがあります。合理的配慮については別記事も参考にしてください。
  • ②主治医・支援者に退職の意思を話したか
    体調や治療方針に退職が影響する場合もあります。「辞めます」と報告するのではなく「辞めることを考えています」と相談してみましょう。
  • ③退職後の収入の見通しがあるか
    雇用保険の受給資格、障害年金の有無、家族のサポートなど、最低でも3か月分の生活費の見通しを確認してから動き始めると安心です。

つまずきやすい点

「辞めると決めたら早く伝えなきゃ」と焦りやすいですが、退職の意思が揺れている段階で上司に伝えると、引き止めや関係悪化につながることがあります。自分の中で8割以上固まってから行動に移しましょう。決断が難しいときは就労支援員やハローワークの担当者に相談するのも一つの方法です。

ステップ2:上司への伝え方を準備する

やること

発達障害や精神障害を抱えながら退職を伝えるときの「上司への伝え方」は、「何を伝えるか」より「どう伝えるか」を先に決めると話しやすくなります。以下のポイントを参考にしてください。

  • 伝える相手を絞る:最初は直属の上司1人だけに伝える。複数の人に同時に話すと情報が広がりやすくなります。
  • 伝えるタイミング:就業規則や雇用契約書に、退職を申し出る期限や手続きが定められている場合があります。期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条により、労働者は退職を申し入れてから原則として2週間を経過すると雇用契約を終了できます。一方、就業規則で「退職日の1か月前まで」などの申出期限を定めている職場もあるため、トラブルを避けるためにも事前に就業規則を確認しておきましょう。
    出典:厚生労働省「モデル就業規則」
  • 障害・病名を伝える義務はない:「体調不良」「通院が必要な状況」など、詳細を明かさない表現で伝えることは問題ありません。開示するかどうかはあなたが決めてよいことです。
  • メモ・メールを活用する:口頭だけでは不安な場合、話す内容を箇条書きにしたメモを持参する、または面談後にメールで要点を送る、という方法が有効です。特にADHDや不安が強い場合、準備したメモがあると話が整理されます。

伝え方の例文(口頭)

以下はあくまで例です。自分の状況に合わせてアレンジしてください。

「お時間いただけますか。退職についてご相談したいことがあります。体調面で継続が難しい状況になり、今月末(または〇月〇日)を退職希望日として考えています。業務の引き継ぎについてはしっかり対応したいと思っています。」

つまずきやすい点

「引き止められたらどう断るか」が怖くて伝えられない、というケースはとても多いです。あらかじめ「引き止められたときの一言」も準備しておきましょう。「気持ちは変わりません。ただ、引き継ぎは丁寧にしたいと思っています」というように、気持ちは動かさず、誠実さだけ示すのが基本です。返答に詰まったときは「少し考えさせてください」と言って場をいったん閉じることもできます。

ステップ3:退職届・退職理由を書く

やること

退職届(または退職願)は、職場所定の書式がある場合はそれに従います。書式がない場合は手書きまたはPCで作成します。退職理由は「一身上の都合により」で十分です。病名や障害の詳細を書く義務はありません。

一方、転職・再就職活動の面接では「退職理由」を問われることがあります。発達障害や精神障害での退職を面接でどう伝えるかは、開示(オープン就労)するかどうかによって表現が変わります。

退職理由の例文:面接で使えるパターン

以下はあくまで例です。実際の状況に合わせて言葉を変えてください。

退職理由の例文(面接用・状況別)
状況 例文(要旨)
障害をオープンにする場合 「発達障害の特性により、現職の業務環境とのミスマッチが続いていました。通院・支援を受けながら自分に合った働き方を探したいと考え、退職を決めました。」
クローズで話す場合 「体調を整えながら長く働ける環境を求めて転職を決意しました。現在は体調が安定しており、仕事に集中できる状態です。」
就労支援を利用する場合 「退職後は就労支援を活用しながら、自分に合った職場環境を見つけるステップを踏んでいます。」

つまずきやすい点

発達障害や精神障害での退職理由を面接で伝えるとき、「正直に言いすぎて不採用になるかも」という不安と、「隠しすぎてまた同じ職場環境に入ってしまうかも」という不安が同時に出やすいです。開示の判断は転職活動の戦略にも関わるため、就労支援員やハローワークの専門援助部門に相談しながら決めるのがおすすめです。

ステップ4:退職後の手続きをまとめておく

やること

退職が決まったら、以下の手続きを退職日前後に確認します。手帳や障害年金の有無によって使える制度が変わります。

  • 雇用保険(失業給付)の手続き:退職後はハローワークで求職の申し込みと受給資格の確認を行います。障害の状況などによりハローワークで「就職困難者」に該当すると判断された場合、一般の離職者より所定給付日数が長くなることがあります。被保険者であった期間が1年以上の場合、45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日、1年未満の場合は年齢にかかわらず150日です。
    出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
  • 健康保険の切り替え:退職後、次の勤務先の健康保険にすぐ加入しない場合は、「これまでの健康保険の任意継続」「国民健康保険」「家族が加入する健康保険の被扶養者」のいずれかへの加入を検討します。任意継続の加入期間は最長2年間で、加入には一定の要件があります。
    出典:全国健康保険協会「退職後の健康保険について」
  • 年金の切り替え:厚生年金に加入していた人が退職し、すぐに次の会社の厚生年金に加入せず、配偶者の扶養にも入らない場合は、原則として国民年金第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。配偶者の健康保険の被扶養者となり、第3号被保険者の要件を満たす場合は、第3号被保険者への手続きを行います。
    出典:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
    収入の減少や失業などにより保険料の納付が難しい場合は、国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用できる場合があります。
  • 自立支援医療(精神通院)の継続確認:退職したことだけを理由に、自立支援医療(精神通院医療)が利用できなくなるわけではありません。ただし、退職によって加入する健康保険が変わった場合は、受給者証の記載事項変更の手続きが必要になる場合があります。また、所得区分や自己負担上限額に変更が生じる場合は、変更申請が必要になることがあります。市区町村等の窓口で確認しましょう。
    出典:厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
  • 傷病手当金の確認:在職中から病気やけがで仕事を休んでいた場合は、退職後も傷病手当金を継続して受給できるか確認します。傷病手当金の1日当たりの支給額は原則として、支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30×3分の2で計算され、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月です。退職後も継続して受給するには、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあることなどの要件があります。
    出典:全国健康保険協会「傷病手当金」

つまずきやすい点

手続きの種類が多く、「どこに何を届け出るか」の整理が難しいと感じる人が多いです。退職前に勤務先の人事・総務に「退職後に自分で行う手続きの一覧を教えてもらえますか」と聞いておくとスムーズです。また、福祉事務所・ハローワーク・市区町村の障害福祉窓口はそれぞれ役割が異なるため、一か所で全部解決しようとせず、種類ごとに相談先を分けて考えましょう。

ステップ5:次の支援・就職に向けて動き出す

やること

退職後の体調が安定してきたら、次のステップを検討します。焦る必要はありませんが、支援につながる動きは早いほど選択肢が広がります。

  • 就労移行支援の見学・相談:一般就労を目指す場合は、就労移行支援事業所への相談も一つの選択肢です。就労移行支援の標準利用期間は2年間です。標準利用期間を超えて引き続き利用する必要があると市町村に認められた場合は、個別の支給決定により利用期間が延長されることがあります。
    出典:厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について」
    利用者負担は原則1割ですが、所得に応じて月額の負担上限額が設定されており、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は利用者負担上限月額が0円です。
    出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」
  • 就労継続支援A型・B型の検討:すぐに一般就労が難しい場合や、体調を整えながら働く場を持ちたい場合に有効な選択肢です。
  • ハローワークの専門援助部門への登録:障害者手帳がある場合は専門援助部門(専門窓口)に登録すると、障害者雇用枠の求人情報や就職相談が受けられます。
  • 就労定着支援の活用(一般就労後):就労移行支援や就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービスを利用して一般就労へ移行した場合、一般就労後6か月を経過し、就労に伴う生活面・社会生活面の課題がある場合は、就労定着支援を利用できることがあります。利用期間は3年間で、本人への相談支援や勤務先・関係機関との連絡調整などの支援を受けられます。
    出典:厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」

つまずきやすい点

「次の就職先が決まらないと支援を使えない」と思っている人がいますが、そうではありません。就労移行支援や相談支援は、次の就職先が決まる前から利用できます。まず「見学・無料相談」から始めるだけでOKです。発達障害や精神障害での退職後、すぐに動けない時期があっても、それ自体を責めないことが大切です。

準備するもの・相談先

退職手続きと次の支援に向けて用意するもの
場面 必要なもの・相談先
上司への伝え方の準備 就業規則(退職申し出期限の確認)、伝える内容のメモ
退職届の提出 職場所定の書式(なければ手書きorPC)、退職日の確認
雇用保険の手続き 離職票、マイナンバーカード(または通知カード+身分証)、ハローワーク
健康保険・年金の切り替え 健康保険証(返却)、市区町村窓口、年金手帳またはマイナンバー
就労支援への相談 障害者手帳(ある場合)、主治医の意見書(就労移行支援利用時など)、就労移行支援事業所・ハローワーク専門援助部門・相談支援事業所

現場からのひとこと

就労支援の現場で退職後の方と関わっていると、「もっと早く相談すればよかった」という言葉をよく聞きます。特に発達障害や精神障害を抱えながら退職を考えている時期は、体調が低下していることが多く、「支援を探す気力がない」という悪循環に陥りやすいです。だからこそ、退職を決めた段階で「一つだけ」相談の電話を入れるという小さな行動が、次のステップへの大きな入口になります。就労移行支援事業所や相談支援事業所は、退職直後でも見学・電話相談を受け付けているところがほとんどです。

また、退職理由を面接でどう伝えるかについては、「正解の言い回し」よりも「自分が安心して話せる言葉」を選ぶことの方が長い目で見て大切です。支援員と一緒に練習する機会をぜひ活用してください。

まとめ|今日からできる最初の一歩

発達障害や精神障害を抱えながら退職を考えるとき、「伝え方がわからない」「次どうすればいいかわからない」という不安が重なると、一歩も動けなくなることがあります。この記事で整理した5つのステップをまとめます。

  1. 退職を決断する前に、配慮・主治医・収入の3点を確認する
  2. 上司への伝え方は「何を言うか」より「どう伝えるか」を先に準備する
  3. 退職届は「一身上の都合」でよい。面接用の退職理由は開示方針に合わせて準備する
  4. 雇用保険・健康保険・年金・傷病手当金など、退職後の手続きをリストアップしておく
  5. 就労移行支援・ハローワーク専門援助部門など、次の支援には退職前から相談できる

今日からできる最初の一歩は、就業規則を確認するか、就労支援事業所に電話一本入れてみる、そのどちらかです。すべてを一度に解決しなくていい。まず、一つだけ動いてみましょう。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学で無料で相談できます。


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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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