てんかんのある人の仕事制限と配慮・支援制度を現場が解説

てんかんのある人の仕事制限と配慮・支援制度を現場が解説 障害・特性別の働き方

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「てんかんがあると、どんな仕事に制限があるの?」「職場に伝えたら、不利になる?」——そんな不安を抱えながらこのページを開いたあなたに、まず伝えたいことがあります。てんかんのある人が働くうえでの仕事制限は確かに存在しますが、それはすべての仕事に当てはまるわけではありません。この記事では、法的な仕事制限の範囲・職場での合理的配慮・使える支援制度まで、就労支援の現場の視点から丁寧に解説します。

結論・要点まとめ

この記事の要点を先にお伝えします。

  • てんかんによる法的な仕事制限は「運転業務」や「高所・危険作業」など一部に限られており、多くの職種では働き続けられます。
  • 職場には合理的配慮を求める権利があり、休憩場所の確保・業務内容の調整などを申し出ることができます。
  • 障害者雇用・就労移行支援など複数の支援制度を組み合わせることで、安定した就労につながる道が広がります。

てんかんのある人に関わる仕事制限とは

てんかんと仕事制限について調べると、まず気になるのが「どんな業務ができないの?」という点ではないでしょうか。制限の根拠は大きく分けて、①法律・資格上の制限と②安全上の実務的な制限の2種類があります。

法律・資格上の仕事制限

最も知られているのが自動車の運転に関するルールです。てんかんがある場合でも一律に運転免許を取得・保持できないわけではありません。現行制度では、発作が再発するおそれがない場合のほか、発作が再発しても意識障害や運動障害を伴わない場合、発作が睡眠中に限られる場合など、一定の医学的条件を満たせば運転免許が認められる場合があります。一方、安全な運転に支障を及ぼすおそれがある発作が再発する可能性がある場合には、免許の拒否・保留・取消し・停止の対象となることがあります。
出典:警察庁「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」

そのため、運送業・タクシー・バスの運転手など業務として車両を運転する職種では、てんかんの発作状況によっては就くことが難しい場合があります。これは差別ではなく、乗客や第三者の安全を守るための法的な枠組みです。

また、職種によっては、てんかんの状態が身体検査や就業可否の判断に影響する場合があります。具体的な基準は資格や職種によって異なるため、所管機関に確認することが大切です。

  • 航空機の操縦士:航空法に基づく航空身体検査証明が必要で、てんかんを含む神経系の疾患について身体検査基準への適合が審査されます。
  • 船員:船員法に基づく健康証明書が必要で、てんかんについても、病状や船内での治療の見込み、船内労働への適否などを踏まえて判断されます。

資格ごとの最新情報は必ず所管官庁や主治医に確認するようにしてください。

安全上の実務的な仕事制限

法律で定められているわけではないものの、発作が起きた際の安全リスクが高いと判断される業務については、職場が配置転換や業務調整を行うことがあります。代表的なものを以下にまとめました。

  • 高所作業・足場作業:発作時の転落リスクがある
  • 機械の操作・プレス作業:回転刃など危険な機械に接触するリスクがある
  • 水辺・水中作業:溺水リスクがある
  • 電気設備の保守作業:感電リスクがある

ただし、これらはすべての人に一律に当てはまるものではありません。発作の頻度・種類・前兆の有無によって個人差が大きく、主治医の意見書をもとに職場と個別に話し合って判断するのが基本的な流れです。

てんかんのある人が職場に求められる合理的配慮

雇用分野では、2016年4月に施行された改正障害者雇用促進法により、事業主には障害のある労働者に対して合理的配慮を提供することが義務付けられています。ただし、事業主に過重な負担を及ぼす場合は除かれます。
出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」
てんかんによって職業生活に制限がある場合も、個々の障害特性や職場で困っていることを踏まえ、必要な配慮について事業主と話し合うことが大切です。

仕事制限の話と並行して、合理的配慮の申し出を上手に活用することで、安心して働き続けやすい環境をつくることができます。


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職場で申し出やすい配慮の例

てんかんのある人が申し出やすい合理的配慮の例
場面 配慮の内容
業務内容 高所・運転など危険を伴う業務からの除外・配置転換
休憩・体調管理 発作後の休憩室の確保、横になれるスペースの用意
緊急対応 発作時の対応マニュアルを上司・同僚と共有する
通院・服薬 定期通院のための休暇取得・服薬時間の柔軟な運用
シフト管理 睡眠不足が誘因になる場合の早朝・深夜シフトの免除

配慮を申し出る際は、「どんな発作がどのくらいの頻度で起きるか」「発作の前兆があるか」「発作時に周囲にしてほしいこと」を整理したメモを用意しておくと、職場との話し合いがスムーズになります。就労支援員や支援機関のスタッフに一緒に作成してもらうことも選択肢のひとつです。

「言いたくない」と感じたときは

「てんかんであることを職場に伝えることで評価が下がるのでは」という心配は、多くの人が持つ自然な感情です。開示(ディスクロージャー)するかどうかは本人の判断であり、強制されるものではありません。ただし、安全に関わる業務をしている場合や、発作時に周囲のサポートが必要な場合は、職場の関係者に伝えておくことが自分自身を守ることにもつながります。「どこまで・誰に・どのように伝えるか」は、就労支援機関のスタッフと一緒に考えることができます。

障害者雇用・就労支援でてんかんのある人が使える制度

てんかんは、精神障害者保健福祉手帳の対象となる精神疾患のひとつです。ただし、診断があるだけで必ず手帳が交付されるわけではなく、精神障害によって長期にわたり日常生活または社会生活に制約があることなどが要件となります。てんかんで精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合は、障害者雇用率制度における精神障害者として算定対象となり、障害者向け求人への応募を検討できます。
出典:厚生労働省「事業主の方へ-障害者雇用率制度」
なお、てんかんそのものを理由に身体障害者手帳が交付されるわけではありません。てんかんとは別に、身体障害者福祉法で定められた一定以上の身体機能障害がある場合には、身体障害者手帳の対象となることがあります。また、精神障害者保健福祉手帳を持っていない場合でも、てんかんによって長期にわたり職業生活に相当の制限がある場合などは、ハローワークや地域障害者職業センターなどの就労支援を利用できることがあります。就職後も、発作の状況や仕事内容に応じて、安全面や勤務方法など必要な合理的配慮について事業主と相談することができます。

利用できる主な支援制度

  • 就労移行支援:一般就労を目指す人に対して、就労に必要な知識・能力を身につけるための訓練、職場体験、求職活動、職場探しなどを支援する福祉サービスです。標準利用期間は2年間で、さらに利用する必要性が認められた場合には、市町村審査会の個別審査を経て最大1年間の更新が可能です。
  • 就労継続支援A型・B型:すぐに一般就労が難しい場合でも、雇用契約を結びながら(A型)または軽作業中心に(B型)働き続けられる場所
  • ハローワークの専門援助部門:障害者雇用専門の窓口で、障害者求人の紹介や職場定着支援を受けられる
  • 地域障害者職業センター:職業評価・職業準備支援・ジョブコーチ支援など専門的なリハビリテーションが受けられる
  • 障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面からサポートしてくれる地域密着の相談窓口

手帳の有無や発作のコントロール状況によって、どの制度が適しているかは変わります。「自分はどこに相談すれば?」と感じたら、まずはかかりつけの医師や市区町村の障害福祉窓口に「働きたい」という意向を伝えてみることからはじめてみてください。

現場からのひとこと

就労支援の現場でてんかんのある利用者と関わっていると、「発作のことを職場に話すタイミングがわからなかった」「制限があると思い込んで、最初から諦めていた」という声をよく耳にします。実際には、発作が薬でコントロールできている状態であれば、事務・データ入力・製造ラインの軽作業など、多くの仕事を問題なく続けているケースも少なくありません。

一方で、発作の種類や頻度は一人ひとりまったく異なります。「この仕事は絶対に無理」でも「何でもできる」でもなく、主治医・支援員・職場の三者が情報を共有しながら、個別に判断していくプロセスが大切です。仕事制限を「壁」として見るのではなく、「どう安全に、自分らしく働くかを決める材料」として捉えていただけると、支援の場でも一歩踏み出しやすくなります。

よくある質問

Q1. てんかんがあると、正社員として採用されにくいですか?

障害者雇用枠・一般雇用枠いずれでも、正社員として採用されている人はいます。発作の状況や職種によって状況は異なりますが、「てんかんだから正社員になれない」というわけではありません。就労支援機関のサポートを活用しながら、自分に合った職場を探すことが大切です。

Q2. てんかんの運転制限はどこで確認できますか?

てんかんに関する運転免許の取扱いは、道路交通法・道路交通法施行令や警察庁の運用基準に基づいて判断されます。てんかんがあることだけで一律に免許が制限されるわけではなく、発作の状況などを踏まえて都道府県公安委員会が個別に判断します。また、一定の病気に該当する疑いがある場合には、医師の診断書の提出を求められることがあります。
出典:警察庁「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」
具体的な運転可否や必要な手続きについては、主治医に相談するとともに、各都道府県警察の運転免許センターや安全運転相談窓口で確認してください。全国共通の安全運転相談ダイヤル「#8080」も利用できます。

Q3. 職場に発作が起きたときの対応を伝えたいのですが、どうすればいいですか?

「発作時の対応カード」を作成して上司や同僚に渡す方法が有効です。発作の様子・してほしいこと・してはいけないこと・連絡先などを簡潔にまとめたものです。就労支援員と一緒に作成するとスムーズです。日本てんかん協会などの当事者団体もひな形を公開していることがありますので、参考にしてみてください。

Q4. 仕事のストレスや疲れが発作に影響することはありますか?

睡眠不足・過度なストレス・疲労が発作の誘因になる場合があることは広く知られていますが、個人差が大きく、医学的な詳細については必ず主治医や専門医にご相談ください。職場環境の調整(残業の制限・シフトの配慮など)は合理的配慮として申し出られる内容に含まれます。

Q5. 障害者手帳がなくてもてんかんで就労支援を受けられますか?

はい、障害者手帳がなくても相談できる就労支援機関があります。ハローワークの障害のある方向け相談窓口や、障害者就業・生活支援センターなどでは、就職や職場定着、生活面を含めた相談を行っています。就労移行支援などの障害福祉サービスについても、障害者手帳が必ず必要というわけではありません。利用するには市区町村へ申請し、障害の状態やサービスの必要性などを踏まえて支給決定を受ける必要があり、支給決定後に障害福祉サービス受給者証が交付されます。
出典:厚生労働省「サービスの利用手続き」
てんかんの状態や必要な支援によって利用できる制度が異なるため、まずは市区町村の障害福祉担当窓口やハローワークなどに相談してみましょう。

まとめ|次にやること

てんかんと仕事制限について、この記事でお伝えしたポイントを振り返ります。

  • 法的な仕事制限は主に運転業務や一部の資格職に限られ、多くの職種では働くことができます
  • 合理的配慮を申し出る権利があり、業務調整・休憩確保・緊急時対応の共有などを職場に求められます
  • 障害者雇用や就労移行支援など複数の支援制度があり、手帳の有無・発作の状況によって活用できる制度が変わります

次に取れる行動として、以下のステップを参考にしてみてください。

  1. 主治医に相談する:今の発作の状況・どんな業務が可能かを確認し、意見書の発行について聞いてみる
  2. 地域の相談窓口に問い合わせる:市区町村の障害福祉窓口・ハローワーク・就労支援機関のいずれかに「働きたい」という意向を伝える
  3. 職場との情報共有を準備する:発作時の対応カードを作成し、伝える内容・タイミングを支援者と一緒に考える

「仕事制限があるから働けない」のではなく、「制限の範囲を正確に知って、自分に合った働き方を探す」——それが、てんかんのある人が安心して長く働き続けるための第一歩です。一人で抱え込まず、あなたのペースで相談してみてください。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学で無料で相談できます。


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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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