高次脳機能障害で障害者雇用を使うには?向いている仕事と配慮事項を支援現場が解説

高次脳機能障害で障害者雇用を使うには?向いている仕事と配慮事項を支援現場が解説 障害・特性別の働き方

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「高次脳機能障害があっても障害者雇用で働けるの?」「どんな仕事が自分に合っているのか分からない」——そんな疑問や不安を抱えてこのページにたどり着いたあなたへ、支援現場の視点からできるだけ具体的に解説します。高次脳機能障害と障害者雇用の組み合わせは、まだ情報が少ない分野ですが、適切な支援と職場の配慮があれば、自分らしく働き続けることは十分に目指せます。この記事では、障害者雇用を利用するための手続き、向いている仕事の特徴、職場に求められる配慮事項、そして就労移行支援の活用法まで、まとめてお伝えします。

結論・要点まとめ

高次脳機能障害があっても、精神障害者保健福祉手帳を取得することで障害者雇用枠を利用できます。記憶・注意・遂行機能などの特性に合った仕事を選び、メモ活用や業務の構造化といった配慮を職場に依頼することが、安定就労への近道です。就労移行支援を活用すれば、訓練から求職活動・定着支援まで一貫してサポートを受けることができます。

高次脳機能障害と障害者雇用の基本的な関係

高次脳機能障害は、脳卒中・交通事故・脳炎などによる脳へのダメージが原因で、記憶・注意・言語・遂行機能・社会的行動などに影響が出る状態です。外見からは分かりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれます。

障害者雇用を利用するには、法的な根拠となる障害者手帳の取得が原則必要です。高次脳機能障害の場合、主に以下の手帳が該当します。

  • 精神障害者保健福祉手帳:高次脳機能障害は精神疾患として扱われるため、多くのケースでこの手帳を取得します
  • 身体障害者手帳:脳卒中などによる肢体不自由・言語障害など、身体機能への影響がある場合に該当することも
  • 療育手帳:知的機能への影響が認められる場合に対象となることがあります

障害者手帳等を取得している場合、障害者向け求人への応募を検討することができます。障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度では、一定規模以上の事業主に、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にすることが義務づけられています。民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日から2.7%となっており、常用雇用労働者37.5人以上の事業主が対象です。
出典:厚生労働省「事業主の方へ―障害者雇用率制度」
障害者向け求人では、障害特性や必要な配慮を伝えながら就職活動を進めることができます。

精神障害者保健福祉手帳の取得方法

精神障害者保健福祉手帳を診断書によって申請する場合は、その精神疾患について初めて医師の診療を受けた「初診日」から6か月を経過した日以後に作成された診断書が必要です。
出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」
申請は、お住まいの市区町村の担当窓口を経由して行います。
手帳の等級は1級・2級・3級の3段階で、精神疾患の状態と、日常生活・社会生活における能力障害の状態を総合的に判断して認定されます。
出典:厚生労働省「障害者手帳について」
手帳の取得を検討している場合は、まず主治医や市区町村の担当窓口などに相談してみましょう。

高次脳機能障害のある人に向いている仕事の特徴

働きやすさは環境から

高次脳機能障害のある人が働く際、どんな仕事が合うかは特性によって大きく異なります。「記憶が苦手」「注意が散漫になりやすい」「複数のことを同時にこなすのが難しい」といった特性を踏まえると、以下のような仕事環境・業務内容が比較的取り組みやすいとされています。

向いている仕事・環境の特徴

  • 手順が決まっているルーティン業務:毎日同じ流れで進む作業は、記憶や遂行機能への負担を減らせます(例:データ入力、清掃、仕分け作業など)
  • マニュアルや手順書がある仕事:「いつ・何を・どうする」が明文化されていると、記憶の補助になります
  • 静かで集中できる環境:騒音や刺激が多い環境は注意障害を悪化させることがあるため、刺激の少ない職場が望ましい場合があります
  • 一度に一つのことに集中できる業務:マルチタスクを求められない仕事は、遂行機能の負担を軽減します
  • 物理的に動きが少ない(または適度な)業務:疲労しやすい特性がある場合、体力の消耗を抑えられる仕事が合うことがあります

具体的な職種例

高次脳機能障害のある人が就いている主な職種例
職種・業務 向いているポイント
データ入力・事務補助 手順が一定、マニュアル化しやすい
軽作業・仕分け・封入 単純繰り返し、体を使いながら集中できる
図書館・資料整理 静かな環境、一定のルールに沿った作業
清掃・施設管理補助 ルーティン性が高く、手順書の活用が容易
農業・園芸(就労継続支援など) 自然のリズムに沿った作業、感覚的に取り組みやすい

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。高次脳機能障害は同じ診断名でも症状の出方が異なるため、就労移行支援などの専門機関で個別にアセスメントを受けることを強くおすすめします。

職場に依頼できる配慮事項(合理的配慮)

困りごとに合わせて配慮を相談

高次脳機能障害で障害者雇用を利用して働く場合、職場からの合理的配慮は、安定して働き続けるうえで重要です。障害者雇用促進法では、2016年4月から、事業主に対して障害のある労働者への合理的配慮の提供が義務づけられています。ただし、事業主に過重な負担となる場合は除かれます。
出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」

「どんな配慮をお願いしていいか分からない」という声はよく聞きます。以下に、高次脳機能障害のある人が職場に依頼しやすい配慮の例をまとめました。


合理的配慮の伝え方メーカー

記憶・遂行機能に関する配慮

  • 業務手順書・チェックリストを用意してもらう
  • 口頭だけでなく、文書・メモ・メールで指示を出してもらう
  • 業務の優先順位を上司と一緒に確認する時間を設ける
  • メモや録音ツールの使用を認めてもらう

注意・集中に関する配慮

  • 作業スペースをパーテーションで区切るなど、刺激を減らす
  • 一度に複数の業務を振らず、一つ終わったら次を指示するようにしてもらう
  • 定期的な休憩を取れるようにしてもらう

社会的行動・コミュニケーションに関する配慮

  • 感情のコントロールが難しい場面に備え、クールダウンできるスペースを確保する
  • 定期的な面談で業務上の困りごとを話し合う機会を設ける
  • チームメンバーへの障害特性についての基本的な周知(本人の同意のもとで)

配慮の内容は、採用面接時または入社後の面談で伝えることが一般的です。就労移行支援の支援員や職場定着支援のスタッフに同席してもらうと、伝え方のサポートを受けられる場合があります。

就労移行支援は高次脳機能障害でも使える?

はい、高次脳機能障害のある方も、対象要件を満たし、市区町村から支給決定を受けることで就労移行支援を利用できます。就労移行支援は、原則として65歳未満で、一般就労を希望し、訓練や職場実習、求職活動などの支援を通じて一般企業等への就労が見込まれる障害のある方を対象とした障害福祉サービスです。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
標準利用期間は24か月(2年間)で、必要性が認められた場合には最大1年間の更新が可能です。就労に必要な知識・能力を身につけるための訓練や職場体験、求職活動、適性に合った職場探し、就職後の定着に向けた支援などを受けられます。

就労移行支援でできること

支援と一緒に就職の準備

  • アセスメント(評価):どんな特性があり、どんな仕事・環境が合うかを一緒に整理する
  • 職業準備訓練:パソコン操作、ビジネスマナー、体力づくりなど
  • 実習(職場体験):実際の職場で働く体験を通じて、自分に合う環境を確認できる
  • 求職活動支援:履歴書の書き方、面接練習、求人探しなど
  • 就職後の定着支援:就労移行支援などを利用して一般就労した場合、就職後6か月を経過した後から、就労定着支援を最長3年間利用できる

高次脳機能障害は特性の個人差が大きいため、支援者が個別に伴走してくれる就労移行支援との相性はよいとされています。複数の事業所の見学・体験利用(無料)を経て、自分に合う事業所を選ぶことができます。

現場からのひとこと

就労支援の現場で高次脳機能障害のある方をサポートしていると、「自分が何に困っているか、うまく言葉にできない」と感じている方が少なくありません。記憶や注意の問題は本人自身も気づきにくいことがあり、「なぜ前に聞いたことを忘れてしまうのか」と自分を責めてしまうケースも見受けられます。支援者として大切にしているのは、まず本人が自分の特性を「知る」ところから一緒に始めることです。

また、職場への配慮依頼は「お願いしていい」と感じられるまでに時間がかかることも多いです。就労移行支援の段階で、配慮を言語化する練習や、実習を通じた特性の確認を丁寧に行うことで、職場定着率が大きく変わると実感しています。高次脳機能障害での障害者雇用は、「準備に時間をかけること」が結果的に近道になることを、ぜひ覚えておいてください。

よくある質問

Q1. 高次脳機能障害で障害者雇用を使うには、必ず手帳が必要ですか?

高次脳機能障害がある方でも、障害者手帳を持っていない場合にハローワークや地域障害者職業センターなどの就労支援を利用できることがあります。一方、障害者雇用率制度上の対象として企業に算定されるためには、原則として障害者手帳等による確認が必要です。高次脳機能障害は、障害の程度によって精神障害者保健福祉手帳の対象となり、片麻痺や失語症、視野障害などの身体障害が残っている場合には身体障害者手帳の対象となることもあります。
実際に応募できる障害者向け求人の条件や、取得できる手帳は本人の障害の状態によって異なります。詳しくはハローワークや高次脳機能障害の支援機関、市区町村の担当窓口などに確認しましょう。

Q2. 高次脳機能障害と診断されたばかりです。すぐに就職活動を始めるべきですか?

焦る必要はありません。高次脳機能障害は、リハビリや時間の経過とともに機能が回復・安定することがあります。主治医や医療リハビリのスタッフと相談しながら、就労の準備が整ったタイミングで動き出すことが大切です。就労移行支援の利用を検討する際は、まず医療機関や地域の相談支援事業所に相談してみてください。

Q3. 就労移行支援の利用料はかかりますか?

就労移行支援には、原則としてサービス費の1割の自己負担がありますが、所得に応じて月ごとの負担上限額が設定されています。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯は、負担上限月額が0円です。
出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」
実際の自己負担額は所得状況などによって異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に確認しましょう。

Q4. 職場に高次脳機能障害のことを開示しなければなりませんか?

障害者雇用枠で応募する場合、手帳の提示は必要ですが、具体的な診断名の開示は義務ではありません。ただし、合理的配慮を依頼するためには、自分の特性や困りごとをある程度伝える必要があります。「どこまで開示するか」は就労移行支援のスタッフと一緒に考えることをおすすめします。

Q5. 高次脳機能障害があると、障害者雇用での採用は難しいですか?

一概に「難しい」とは言えません。特性に合った職種・職場を選ぶこと、配慮を適切に伝えること、就労前に十分な準備をすることで、安定して働いている方は多くいます。就労移行支援を経由して就職するルートは、定着率の面でも効果的とされています。

まとめ|次にやること

高次脳機能障害と障害者雇用について、この記事でお伝えしたポイントを整理します。

  • 精神障害者保健福祉手帳(または身体障害者手帳)を取得することで、障害者雇用枠を利用できる
  • 手順が決まったルーティン業務や、刺激が少ない環境が比較的取り組みやすい
  • メモ・手順書・一業務ずつの指示など、職場への合理的配慮の依頼が安定就労のカギになる
  • 就労移行支援は高次脳機能障害でも利用でき、アセスメントから定着支援まで一貫してサポートを受けられる

まず動けること、として以下をおすすめします。

  • ①主治医に相談する:就労の時期や手帳申請について確認する
  • ②相談支援事業所・ハローワーク(専門援助部門)に連絡する:地域の支援サービスを把握する
  • ③就労移行支援事業所の見学・体験利用をしてみる:複数を比較して自分に合う場所を探す

一人で抱え込まず、支援の専門家と一緒に「自分らしく働く」ための準備を進めてください。あなたのペースで、着実に前に進むことが大切です。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学で無料で相談できます。


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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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