聴覚障害がある人の職場コミュニケーション術|困りごと別の伝え方と合理的配慮の頼み方

聴覚障害がある人の職場コミュニケーション術|困りごと別の伝え方と合理的配慮の頼み方 障害・特性別の働き方

本記事にはアフィリエイト広告が含まれる場合があります。

「会議で聞き取れなくて困っている」「上司にどう伝えればいいかわからない」——聴覚障害がある人の仕事でのコミュニケーションや伝え方に悩む声は、就労支援の現場でも日常的に聞かれます。この記事では、職場での具体的な困りごとを場面別に整理しながら、合理的配慮の頼み方・例文・同僚への伝え方まで、実践的なヒントをまとめました。

結論・要点まとめ

聴覚障害がある人の職場コミュニケーションの悩みは、「伝え方の工夫」「配慮の申請」「周囲との関係づくり」の3つに整理できます。合理的配慮は法律に基づく権利であり、事業主に申請することができます。困りごとを言語化して具体的に伝えることが、職場での合意形成の第一歩です。

聴覚障害がある人が職場で感じやすい困りごと

聴覚障害がある人が職場で感じやすい困りやすい場面

聴覚障害は、見た目では気づかれにくいことが多く、「なんとなく聞いていないのかな」と誤解されてしまうこともあります。まずは、どんな場面で困りやすいかを把握しておきましょう。

  • 会議・朝礼で話し合いの内容が追えない
  • 電話対応が難しく、業務分担に悩む
  • マスクや口元が隠れていて口話(読唇術)が使いにくい
  • 工場・施設などで警報音・呼び出し音に気づけない
  • 雑談や非公式なやりとりについていけず、孤立感を覚える
  • 「聞こえていると思われている」ために配慮を求めにくい

こうした困りごとは、聴力の程度(重度・中等度・軽度)や、使用するコミュニケーション手段(手話・口話・筆談・補聴器など)によっても大きく異なります。「自分はこの状況で困っている」と具体的に言語化することが、次のステップへの土台になります。

合理的配慮とは?職場への申請の基本と例文

合理的配慮の例

合理的配慮とは何か

雇用分野では、2016年4月から障害者雇用促進法により、事業主に障害のある人への合理的配慮の提供が義務付けられています。合理的配慮とは、障害のある人が募集・採用や職場で働くうえで支障となっている事情を改善し、障害のない人と均等な機会や待遇を確保したり、能力を発揮しやすくしたりするために、障害の特性に応じて必要な対応を行うことです。ただし、事業主に過重な負担となる場合は除かれます。
出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」

合理的配慮は単なる「特別扱い」ではなく、障害によって生じている働きにくさを取り除き、能力を発揮できるようにするための個別の調整です。具体的な配慮の内容については、本人の意向を尊重しながら事業主と話し合って決めていきます。

聴覚障害に関する合理的配慮の具体例

職場で申請できる合理的配慮の例
困りごと 配慮の例
会議の内容が聞き取れない 議事録の共有、文字通訳(UDトーク等)の導入、手話通訳者の配置
電話対応が難しい 電話業務の免除・代替手段(メール・チャット)への変更
警報・呼び出し音に気づけない 光や振動による警告装置の設置、担当者への声かけ依頼
口元が見えず聞き取れない マスク着用時は透明マスクの使用・筆談の徹底
指示の聞き取りミスが起きやすい 口頭指示に加えてメモ・メッセージでの確認を標準化

合理的配慮を申請するときの伝え方・例文

合理的配慮を申請するときの伝え方のコツ

申請するときは「自分が何に困っているか」「どんな配慮があれば解決できるか」を具体的に伝えることがポイントです。以下は、上司や人事に伝える際の例文です。

  • 【例文①:会議の文字起こしを依頼する場合】
    「聴覚障害があるため、会議の音声を聞き取ることが難しい状況です。UDトーク(自動文字起こしアプリ)をスクリーンに映していただくか、議事録を当日中に共有していただけると助かります。」
  • 【例文②:電話対応の業務調整を依頼する場合】
    「電話の音声が聞き取りにくいため、電話対応の業務をほかのスタッフに振り分けていただき、私はメール・チャット対応を担当させていただけますでしょうか。」
  • 【例文③:指示をメモで残してもらう場合】
    「口頭だけの指示は聞き取りが難しいことがあるため、重要な内容はメッセージやメモでも共有していただけると、ミスを防ぐことができます。」

申請は口頭でも可能ですが、後から内容が確認できるようにメールや書面で記録を残しておくと安心です。

場面別|聴覚障害のある人が使える職場コミュニケーションの工夫

会議・打ち合わせ

聴覚障害がある人の仕事でのコミュニケーションの中でも、会議は最も困りやすい場面のひとつです。以下の工夫を組み合わせることで、参加のハードルが下がります。

  • 事前にアジェンダ(議題)を共有してもらい、話の流れを予測しやすくする
  • 発言者が1人ずつ話すよう、ファシリテーターに依頼する
  • UDトークの無料版やGoogle ドキュメントの音声入力など、無料または低コストで利用できる音声認識・文字入力ツールを活用する
  • 重要な決定事項は、会議後にチャットやメールで改めて確認する

日常的な1対1のやりとり

同僚や上司との日常会話では、以下のような「自分のコミュニケーション方法を伝える」アプローチが有効です。

  • 「正面から話しかけてもらえると助かります」と入社時や配属時に一言伝える
  • 筆談ボード・スマートフォンのメモアプリを手元に置き、必要に応じてすぐ使えるようにする
  • 聞き取れなかったときは「もう一度教えてください」と遠慮なく伝える習慣をつける
  • チャットツール(Slack・Teamsなど)を積極的に活用し、テキストでのやりとりを主軸にする

電話が必要な業務

電話対応が難しい場合は、合理的配慮として、電話業務の免除や軽減、他の業務への振り替えなどを職場に相談することができます。具体的な対応は、障害の特性や業務内容などを踏まえて事業主と話し合って決めます。それ以外にも、電話リレーサービスは、聴覚や発話に困難のある人が手話や文字を使い、通訳オペレーターが音声との間を通訳することで、電話の相手とのやり取りを仲介するサービスです。2021年7月1日から、法律に基づく公共インフラとして提供されています。電話での連絡が必要な場面では、このようなサービスを活用する方法もあります。
出典:一般財団法人日本財団電話リレーサービス「電話リレーサービスとは」

雑談・非公式なコミュニケーション

ランチや休憩中の会話についていけないと感じることも、聴覚障害がある人の仕事での孤立感につながりやすい場面です。「うまく聞き取れていないことがある」と周囲に知ってもらうだけで、声かけの仕方が変わることがあります。自分から「聞こえにくいのでメッセージで教えてくれると嬉しいです」と伝えると、関係が壊れるどころか、相手が工夫しやすくなるケースも多いです。

同僚・上司への「伝え方」のポイント

聴覚障害があることを職場にどう伝えるかは、人それぞれのペースや判断があっていいことです。ただ、伝え方を工夫することで、配慮を受けやすくなることは確かです。

  • タイミング:入社前・配属前に人事に伝えておくと、環境整備の時間が生まれる
  • 内容:「何が聞こえにくいか」「何をしてもらえると助かるか」を具体的にセットで伝える
  • 方法:口頭よりもメールや書面で伝えると、記録が残り後から確認しやすい
  • 範囲:全体公表か、直属の上司のみへの開示かは、自分が決めてよい

障害のある人は、合理的配慮について自分だけで職場に伝えることが難しい場合、ハローワークや就労支援機関などに相談することができます。厚生労働省の合理的配慮指針では、合理的配慮について本人の意向を確認することが難しい場合などに、就労支援機関の職員等に本人を補佐してもらうことができるとされています。また、ハローワークでは障害のある人への職業相談や職場定着支援を行っています。就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどでも、本人の状況に応じて、職場との調整や必要な支援につなげてもらえる場合があります。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」

現場からのひとこと

就労支援の現場では、聴覚障害のある利用者さんから「配慮を申請したいけど、どう言えばわかってもらえるか不安」という声をよく聞きます。経験上、配慮の申請がうまくいくケースに共通しているのは、「何に困っているか」と「どうしてほしいか」の2点をセットで、具体的に伝えられているときです。漠然と「聞こえにくい」と伝えるよりも、「会議でAという内容が聞き取れないので、Bという方法を取ってほしい」と伝える方が、職場側も動きやすくなります。

また、入社後しばらくして「やっぱり伝えておけばよかった」と後悔するケースも見受けられます。就労支援機関は、職場への申請を一緒に考えるサポートも担っています。一人で抱え込まず、まずは支援者に相談してみてください。

よくある質問

Q1. 障害者手帳がないと合理的配慮を申請できませんか?

いいえ。雇用分野における合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限定されていません。障害者雇用促進法では、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)などの心身の機能の障害により、長期にわたって職業生活に相当の制限を受ける人なども対象とされています。そのため、障害者手帳を持っていなくても、聞こえにくさによって仕事上の支障がある場合は、必要な合理的配慮について勤務先に申し出たり、相談したりすることができます。ただし、具体的な配慮の内容は本人と事業主で話し合って決められ、事業主に過重な負担となる場合は除かれます。
出典:厚生労働省

Q2. 「聞こえているふり」をしてしまいがちで、申し訳なく思ってしまいます。

その気持ちはとても自然なことです。ただ、聞こえていないのに聞こえたふりをすることで、業務上のミスやすれ違いが生まれ、結果的にあなた自身も職場も困る場面が増えることがあります。「わかりませんでした、もう一度教えてください」と伝えることは、誠実なコミュニケーションです。繰り返し聞くことへの遠慮は、支援者と一緒に整理していけることでもあります。

Q3. 会社にUDトークや手話通訳の費用を負担してもらえますか?

必要なコミュニケーション支援については、合理的配慮として会社と相談することができます。ただし、希望する方法や費用が必ずそのまま会社負担になるとは限らず、障害の特性や業務内容、費用負担などを踏まえて個別に検討されます。事業主が聴覚障害のある従業員のために手話通訳・要約筆記等担当者を委嘱する場合、「障害者雇用納付金制度」に基づく障害者介助等助成金の対象となる場合があります。また、障害特性に応じた設備や補助機器の導入についても、障害者作業施設設置等助成金の対象となる場合があります。助成金には対象者や対象措置、申請時期などの要件があるため、利用できるかどうかは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の都道府県支部などに確認する必要があります。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金」

Q4. 同僚全員に障害のことを話したくない場合はどうすればいいですか?

何をどこまで誰に伝えるかは、あなた自身が決めてよいことです。まずは直属の上司や人事担当者にだけ伝え、「同僚には広めないでほしい」と依頼することも可能です。一方で、業務上の配慮をチーム全体に周知する必要がある場合は、「音が聞き取りにくい場面があるので、メモやチャットで伝えてもらえると助かります」という形で、障害名を伏せた伝え方をする方法もあります。

Q5. 転職活動中に聴覚障害について伝えるタイミングはいつがよいですか?

一般的には、採用選考の中で配慮が必要な場合(面接での聞き取り方法など)は選考前に伝えておく方がスムーズです。障害者雇用枠での応募であれば、応募時点から開示します。一般枠での応募でいつ・どこまで伝えるかは状況によって異なるため、就労支援機関のスタッフと相談しながら決めることをおすすめします。

まとめ|次にやること

聴覚障害がある人の職場でのコミュニケーションや伝え方の悩みは、「伝わらない」ことへの不安から来ていることが多いです。でも、伝え方を工夫し、合理的配慮を活用することで、職場環境は変えていくことができます。

  • ✅ 自分の「困りごと」を具体的に言語化してみる
  • ✅ 会議・日常会話・電話など場面別に必要な配慮を書き出す
  • ✅ 人事や上司への伝え方に迷ったら、就労支援機関・ハローワークに相談する
  • ✅ 電話リレーサービスや文字起こしツールなど、使えるリソースを確認する

一人で抱え込まずに、支援者と一緒に「職場への伝え方」を整理することが、働きやすい環境への第一歩になります。あなたが安心して働き続けられるよう、サポートを活用してみてください。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学無料で相談できます。


【PR】障害者雇用で、自分に合った仕事を探したい方へ

dodaチャレンジなら、
障害者雇用に詳しい専任のキャリアアドバイザーが、
あなたの希望や特性に合わせて転職・就職をサポート。


\相談・サービス利用は無料/
▶ dodaチャレンジで転職・就職相談をする 障害者雇用で、自分に合った仕事を探したい方へ

監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

運営者情報

タイトルとURLをコピーしました