障害者雇用の職場定着率が低い理由と長く続けるコツ【支援現場が解説】

障害者雇用の職場定着率が低い理由と長く続けるコツ【支援現場が解説】 障害者雇用の基礎知識

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「障害者雇用で就職できたけど、長く続ける自信がない」「一度辞めてしまったけど、次こそは職場定着したい」――そんな悩みを抱えていませんか。障害者雇用の職場定着と続けるコツを知りたい人は、いま非常に多くいます。

法定雇用率の引き上げにより、障害のある人の採用機会は年々広がっています。しかし「採用されること」と「長く働き続けること」は別の問題です。せっかくつかんだ仕事を手放してしまう背景には、本人・職場・環境それぞれの要因が複雑に絡み合っています。

この記事では、障害者雇用の定着率に関するデータをもとに「なぜ続かないのか」を整理し、職場定着を続けるコツを具体的にお伝えします。在職中のあなたにも、転職活動中のあなたにも役立つ内容です。

結論・要点まとめ

この記事の答えを先にお伝えします。

  • 障害者雇用の定着率は一般雇用と比べて低い傾向があるが、準備・環境整備・相談先の確保という3つの柱で改善できる。
  • 辞める理由の上位は「職場の人間関係・コミュニケーション」「体調管理」「業務内容とのミスマッチ」であり、入職前後の対策が鍵になる。
  • 就労支援機関や職場内のサポート体制を上手に活用することが、障害者雇用の職場定着と続けるコツの核心である。

障害者雇用の定着率はどのくらい?データで見る現状

1年後の定着率

まず、障害者雇用の定着率について公表されているデータを確認しましょう。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の障害者職業総合センターの調査によると、一般企業に就職した障害者の就職後1年時点の職場定着率は、身体障害者60.8%、知的障害者68.0%、精神障害者49.3%、発達障害者71.5%となっています。

出典:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究 No.137」(2017年4月)

注目したいのは精神障害のある方の定着率です。JEED(障害者職業総合センター)が紹介している先行研究では、ハローワークを利用した精神障害者の職場定着率は、就職後1年時点で34.6%、3年時点で22.4%と報告されています。

出典:障害者職業総合センター「資料シリーズ No.86」

一方で、これらの数字はあくまで平均であり、職場環境・支援体制・本人の準備状況によって結果は大きく変わります。「統計が低いから自分も無理」ではなく、「どうすれば定着できるか」に目を向けることが大切です。

一般雇用との比較

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、一般労働者の2024年の年間離職率は11.5%となっています。一方、障害者雇用では職場定着が重要な課題の一つとされており、JEEDの調査では、一般企業に就職した精神障害者の就職後1年時点の職場定着率は49.3%と報告されています。

出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」

ただし、この差には「障害の特性への配慮が不十分な職場」「本人が特性を開示しきれていない状況」「就職前のマッチング不足」といった構造的な背景があります。個人の問題だけでなく、職場側の受け入れ体制も定着率に大きく影響します。

障害者雇用で続かない・辞める主な理由

障害者雇用で続かない4つの理由

障害者雇用で職場定着が難しくなる理由を整理すると、大きく4つに分けられます。

① 職場の人間関係・コミュニケーションのつまずき

就労支援の現場でもっともよく聞かれる離職理由のひとつが「人間関係」です。障害の特性から、空気を読むことや暗黙のルールへの対応が難しいケース、相談したくても言葉にできないケースがあります。また、上司や同僚が障害への理解を持っていないと、些細なやり取りが積み重なってストレスになることも少なくありません。

② 体調管理の難しさ

精神障害・発達障害・難病などでは、疲労の蓄積やストレス反応が体調に直結しやすいことがあります。「無理をして出勤し続けた結果、休職・退職に至る」という経緯は非常に多いパターンです。体調の変化に早めに気づき、職場や支援機関に伝えるスキルが、障害者雇用の職場定着と続けるコツとして重要視されています。

③ 業務内容・労働条件とのミスマッチ

入職前のイメージと実際の業務が異なるケース、業務量が徐々に増えて対応できなくなるケースも多く見られます。「断れなかった」「相談できなかった」という声は現場でも頻繁に聞かれます。

④ 合理的配慮がうまく機能していない

雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、2016年4月から事業主に対して障害のある労働者への合理的配慮の提供が義務付けられています。合理的配慮の内容は一律ではなく、本人の障害特性や職場の状況などを踏まえて、双方で話し合いながら検討することが重要です。しかし、制度があっても「何を配慮してほしいか自分でうまく伝えられない」「配慮を求めたら嫌がられそうで言い出せない」といった状況は依然として多くあります。

出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」

障害者雇用の職場定着と続けるコツ:5つの実践ポイント

障害者雇用で長く続ける5つのコツ

ここからは、障害者雇用の職場定着を続けるコツを5つの視点から具体的にお伝えします。

コツ① 入職前に「自分の取扱説明書」を整理する

得意なこと・苦手なこと・体調が崩れやすい状況・必要な配慮を、自分の言葉でまとめておきましょう。就労支援機関を利用している場合は、スタッフと一緒に作成するのがおすすめです。この「自己理解の言語化」が、職場への配慮依頼をスムーズにし、障害者雇用での職場定着につながります。

コツ② 相談できる人・場所を複数持つ

職場内の担当者だけでなく、外部の就労支援機関や家族など、複数の相談先を持っておくことが大切です。就労移行支援事業所では、就職後も少なくとも6か月以上、職場への定着に向けた相談支援を行うこととされています。その後も、必要に応じて障害者就業・生活支援センターなどの関係機関へ支援が引き継がれます。また、一般就労後の定着を支援する「就労定着支援」は2018年4月に創設されており、一般就労後6か月を経過した後、要件を満たせば最長3年間利用できます。

出典:厚生労働省

コツ③ 「小さな変化」を見逃さない体調管理の習慣

「なんとなく疲れている」「眠れない日が続いている」といったサインを放置しないことが重要です。日々の体調を簡単に記録する習慣(手帳・スマホアプリなど)をつけておくと、変化に早めに気づけます。体調の変化は、主治医や支援機関に早めに相談しましょう。

コツ④ 配慮依頼は「具体的に・こまめに」

「なんとなく困っている」より「〇〇の場面で△△してもらえると助かる」という形で伝えると、職場側も対応しやすくなります。最初に伝えた配慮が合わなくなることもありますので、定期的に見直す機会を作ることも大切です。

コツ⑤ 「続けること」を目標にしすぎない

「絶対に辞めてはいけない」というプレッシャーが、かえって無理を生むことがあります。困ったときに「辞める前に相談する」という選択肢を持っておくことで、精神的な余裕が生まれます。職場定着と続けるコツは、ひとりで抱え込まないことでもあります。

企業側に期待したい職場定着支援の取り組み

職場定着は本人だけの課題ではありません。受け入れ企業の姿勢も大きく影響します。

  • 障害のある従業員を担当する障害者職業生活相談員の配置(障害者を5人以上雇用する事業所に選任が義務づけられている)
    出典:厚生労働省
  • 定期的な面談・業務内容の見直し機会の設置
  • 社内の障害理解促進のための研修
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用

あなたが在職している職場にこうした仕組みがない場合、就労支援機関のスタッフを通じて職場に働きかけてもらえる場合もあります。

現場からのひとこと

就労支援の現場で多くの方の就職・定着をサポートしてきた経験から言えることは、「辞めてしまった人」と「定着できた人」の違いは能力や障害の重さではなく、「困ったときに誰かに話せたかどうか」にあることが多いということです。支援者としても、就職後しばらくしてから「実は最初から辛かった」と打ち明けられるケースを何度も経験しています。

定着支援はゴールではなく、継続的な関係性の中で成り立つものです。支援機関への連絡が「相談」ではなく「報告」になってしまっていないか、私たち支援側も常に問い直す必要があります。あなたが「ちょっと変だな」と感じたそのタイミングで連絡してもらえる関係を、ぜひ支援者と築いてほしいと思います。

よくある質問

Q1. 障害者雇用で何度も転職を繰り返してしまいます。次こそは定着したいのですが、どうすればいいですか?

まず、これまでの職場でどんな場面が辛かったかを整理することが大切です。就労移行支援や障害者就業・生活支援センターなどを活用しながら、自分の特性と働く環境のミスマッチを事前に減らす準備をすることが、定着への近道です。転職回数を気にするより「次の職場で何を変えるか」を具体化することを優先しましょう。

Q2. 職場に配慮をお願いしたいけれど、どう切り出せばいいかわかりません。

「〇〇が苦手なので△△の方法にしてもらえますか」という形で、具体的な場面と対応策をセットで伝えると職場側も動きやすくなります。うまく言葉にできない場合は、就労支援スタッフや支援機関のジョブコーチに同席・代弁してもらう方法もあります。ひとりで抱え込まずに活用してください。

Q3. 就労定着支援サービスはどんな人が使えますか?

就労定着支援は、就労移行支援・就労継続支援A型/B型・生活介護・自立訓練などを利用した後に一般就労し、就労に伴って生活面や社会生活上の課題が生じている方が対象です。一般就労後6か月を経過した後から、要件を満たせば利用できます。利用にあたっては市区町村への申請が必要です。詳しくはお住まいの市区町村または支援機関にご確認ください。

出典:厚生労働省

Q4. 精神障害の場合、定着率が低いのはなぜですか?

体調が波打ちやすいこと、疲労やストレスが症状に影響しやすいこと、「無理をしてしまいやすい」傾向があることなどが複合的に影響していると言われています。ただし、適切な配慮・支援環境が整えば長期定着している方も多くいます。症状や体調の変化については主治医や専門機関にご相談ください。

Q5. 障害者雇用での職場定着と続けるコツは、支援なしでも実践できますか?

自己理解の深化・体調管理・配慮の伝え方など、自分でできることは多くあります。ただ、職場環境の調整や企業への働きかけには、就労支援機関の力を借りた方が効果的なケースがほとんどです。「支援を使うこと」自体がコツのひとつとも言えます。

まとめ|次にやること

障害者雇用の職場定着と続けるコツを、改めて整理します。

  • 自己理解を言語化する:自分の得意・苦手・必要な配慮を整理しておく
  • 相談先を複数持つ:職場の担当者・就労支援機関・家族など、複数のサポートラインを作る
  • 体調の小さな変化に気づく習慣をつける:記録と早めの相談が定着の土台になる
  • 配慮は具体的にこまめに伝える:「困っているけど言えない」を減らすことが職場定着につながる
  • 就労定着支援などの制度を活用する:ひとりで抱え込まず、使える支援は積極的に使う

「なぜ続かないのか」を責める必要はありません。構造的な課題を知った上で、使えるサポートを組み合わせながら、あなた自身のペースで働き続けられる環境を一緒につくっていきましょう。

もし今の職場や次の就職について不安があれば、就労移行支援や障害者就業・生活支援センターへの相談から始めてみてください。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学無料で相談できます。


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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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