障害のある家族が「仕事を辞めた」と言ってきたとき家族の関わり方【場面別の言葉かけ例】

障害のある家族が「仕事を辞めた」と言ってきたとき家族の関わり方【場面別の言葉かけ例】 家族・支える人へ

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障害のある家族が「また仕事を辞めた」と打ち明けてきたとき、あなたはどんな言葉をかけましたか?「なんで続けられなかったの」と責めてしまった、反対に何も言えずに黙り込んでしまった——そんな経験をしている家族の方は少なくありません。仕事を辞めた家族への関わり方をどうすればいいか迷うのは、あなたが不誠実なのではなく、正解が見えにくい場面だからです。この記事では、退職直後の言葉かけから次のステップへの橋渡しまで、場面別の会話例で具体的に整理します。

伝えるときの基本の3ステップ

退職直後の家族との関わり方には、大きく3つの流れがあります。この順番を守るだけで、関係が壊れるリスクをぐっと下げられます。

  1. まず「気持ちを受け取る」——解決策や原因追及は後回し。本人が言葉にしたことを否定せず、いったん受け取る。
  2. 次に「状況を一緒に整理する」——落ち着いてから、何があったかを本人のペースで話せる場をつくる。
  3. 最後に「次の選択肢を一緒に調べる」——本人が「動けそう」と感じたタイミングで、支援機関や制度の情報を共有する。

よくある失敗は、ステップ1を飛ばしてステップ3に急ぐことです。本人がまだ傷ついているときに「次はどうするの?」と迫ると、相談できる相手を失うリスクがあります。

場面1:退職をはじめて打ち明けられたとき

退職直後は、本人にとって最も傷つきやすい時間帯です。この場面での家族の言葉かけが、その後の関係性と本人の回復速度に大きく影響します。

言いづらい例

(会話例・イメージです)

  • 「また辞めたの?今度は何が原因?」
  • 「せっかく決まった仕事なのに……」
  • 「もっとがんばれなかったの?」

原因を即座に問い詰めると、本人は「やっぱり責められた」と感じ、次から話してくれなくなることがあります。

伝わりやすい例

(会話例・イメージです)

  • 「話してくれてありがとう。つらかったね」
  • 「今はゆっくりしていていいよ。話したくなったら聞くから」
  • 「何があったか、落ち着いたら少しだけ聞かせてもらえる?」

「ありがとう」と「聞く」という言葉を最初に置くだけで、本人の安心感が大きく変わります。仕事を辞めた家族への関わり方で最初に意識してほしいのは、「情報収集より感情の受け取り」です。

場面2:何度目かの退職で、家族が感情的になりそうなとき

1度目、2度目と退職が続くと、家族の側にも疲弊や苛立ちが蓄積します。「またか」という感情を持つこと自体は自然なことです。ただ、その感情をそのままぶつけると関係が壊れやすくなります。

言いづらい例

(会話例・イメージです)

  • 「正直もう、どうしたらいいかわからない」(溜め息まじりに)
  • 「これで何回目?さすがにもう……」
  • 「いつになったら自立できるの」

家族の限界感が言葉に乗ると、本人は「自分が家族を疲れさせている」という罪悪感を深め、次の行動への意欲をさらに失いやすくなります。

伝わりやすい例

(会話例・イメージです)

  • 「私も正直焦る気持ちがあるけど、あなたのことを一緒に考えたいと思ってる」
  • 「私も何か力になれることがあれば教えてほしい」
  • 「今回のことで、何か支援者に相談してみようか」

自分の感情を「Iメッセージ」で伝えながら、責める方向ではなく「一緒に考える」姿勢を示すのがポイントです。家族自身が支援機関に相談することも、有効な選択肢の一つです(後述)。

場面3:本人が「もう働きたくない」と言い出したとき

退職後しばらくすると、「もう働かなくていい」「自分には無理だ」という言葉が出てくることがあります。これは多くの場合、疲弊と傷つきのサインです。すぐに否定も肯定もせず、言葉の裏にある気持ちを受け取ることが大切です。

言いづらい例

(会話例・イメージです)

  • 「そんなこと言ってないで、また探しなさい」
  • 「働かなかったら生活できないでしょ」
  • 「そういう考えだからダメなんだよ」

「働くべき」という正論は正しくても、疲弊した本人には届きにくく、むしろ孤立感を深めます。

伝わりやすい例

(会話例・イメージです)

  • 「今はそう感じるよね。それだけ疲れたんだと思う」
  • 「焦らなくていいから、少し休んでから一緒に考えよう」
  • 「働き方にはいろんな形があるみたいだから、調べてみようか」

「働くかどうか」の議論より先に、「今の気持ちを受け取る」ことを優先します。本人が働くことを考え始めたときに備えて、就労移行支援やハローワークの障害のある方向け専門窓口など、就職や働き方について相談・支援を受けられる機関やサービスがあります。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
出典:厚生労働省「障害者に関する窓口」
こうした支援先をあらかじめ情報として知っておくと、本人が相談してみたいと思ったタイミングで次の行動につなげやすくなります。

場面4:家族が「次の仕事」を急かしてしまいそうなとき

家族として経済面や将来のことが心配になるのは当然です。ただ、退職直後に「次はいつ探すの?」と急かすことは、本人の回復の妨げになることがあります。一方で、まったく何も言わず放置するのも「無関心」に見えてしまいます。この場面では、関心を示しながら急かさないバランスが重要です。

言いづらい例

(会話例・イメージです)

  • 「休んでいいけど、いつから動くか決めておいて」
  • 「来月には動いてほしいんだけど」
  • (何も言わず、部屋に引きこもる家族を見守るだけ)

伝わりやすい例

(会話例・イメージです)

  • 「今は休む期間にしよう。ただ、気持ちが落ち着いたら少し話せると嬉しい」
  • 「焦らせたいわけじゃないけど、一人で抱え込まないでほしい。相談できる人を一緒に探せるから」
  • 「何か調べておこうか?押しつけるつもりはないけど、情報だけでも持っておきたくて」

仕事を辞めた家族への関わり方で家族が陥りやすいのが、「過干渉」と「放置」の両極です。「あなたのことが心配だから関わりたい」という気持ちを言葉にしながら、決定権は本人に渡すのが基本姿勢です。

場面5:支援機関への相談を勧めたいとき

退職が続く背景には、障害特性と職場環境のミスマッチや、そもそも合った仕事の探し方が見つかっていないケースが多くあります。こうした場合、就労支援機関(就労移行支援・障害者就業・生活支援センターなど)への相談が有効ですが、本人に「行かされる感」を持たせると抵抗感が強まります。

言いづらい例

(会話例・イメージです)

  • 「就労移行に行きなさい。あなたには必要だから」
  • 「支援を使わないからいつまでも続かないんだよ」
  • 「もう私じゃ対処できないから、専門家に行って」

伝わりやすい例

(会話例・イメージです)

  • 「こういう相談に乗ってくれるところがあるみたいだけど、一緒に話を聞きに行ってみない?」
  • 「私も一緒に行くよ。一人で行かなくていいから」
  • 「無料で相談できるみたいだし、行かなくてもいいけど、情報だけ見てみない?」

「一緒に行く」「情報を見るだけ」といったハードルの低い提案が、本人が動き始めるきっかけになることがあります。障害者就業・生活支援センターでは、本人だけでなく家族から相談を受ける場合もあります。また、就労移行支援事業所でも家族との情報共有や相談対応を行っている事業所があります。
出典:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターの指定と運営等について」
家族だけで相談できるかどうかは機関・事業所によって異なるため、事前に問い合わせて確認するとよいでしょう。

伝えたあとのフォロー

言葉をかけた後も、仕事を辞めた家族への関わり方は継続して問われます。一度「大丈夫」と言えた本人が、翌日にはまた落ち込んでいることも珍しくありません。以下の点を意識して、日常の中での関わりを続けてください。

  • 定期的に「調子どう?」と声をかける——毎日でなくてもよい。週1〜2回程度、負担にならない頻度で。
  • 本人の「動ける日」を見逃さない——急に「ちょっと調べてみた」と話してくることがある。そのタイミングを大切にする。
  • 家族自身も相談窓口を活用する——家族だけで抱え込まないことが、長期的な支援の継続につながる。
  • 「働くこと」以外の話もする——趣味や日常の話ができる関係を保つことが、本人の孤立防止になる。

なお、離職後の生活を支える可能性がある制度として、障害年金、生活保護、傷病手当金の退職後の継続給付などがあります。ただし、それぞれ対象要件や支給条件が異なり、離職しただけで利用できるものではありません。
出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件」
出典:厚生労働省「生活保護制度」
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」
詳細は、各制度の窓口や専門機関に確認してください。

現場からのひとこと

就労支援の現場で家族から相談を受けるとき、最も多いのが「どこまで関わればいいかわからない」という声です。本人を心配するあまり先回りしすぎると、本人の「自分で決める力」が育ちにくくなります。一方で、「本人が動くまで待つ」だけでは、孤立が深まるリスクもあります。支援者として大切にしているのは、「本人が主語であり続けられるように、家族は少し後ろに立つ」という感覚です。

また、家族が疲弊して関わりを続けられなくなるケースも少なくありません。「自分が倒れたら誰が支えるか」という視点で、家族自身が相談機関や家族会とつながることを強くおすすめしています。支援は本人だけでなく、家族ごと支えるものだと考えています。

まとめ

障害のある家族が「仕事を辞めた」と打ち明けてきたとき、家族が陥りやすいのは「責める」か「黙る」かの両極です。どちらも本人の孤立を深めるリスクがあります。

仕事を辞めた家族への関わり方の基本は、①気持ちをまず受け取る、②一緒に整理する、③本人のペースで次を考える、の3ステップです。「次はどうするの?」という言葉より先に「話してくれてありがとう」という受け取りの言葉が、長期的な関係と本人の回復を支えます。

もし関わり方に行き詰まりを感じたら、家族だけで抱え込まずに就労支援機関や相談窓口に連絡してみてください。家族が相談することは、本人への支援の第一歩にもなります。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

はたらく森(A型・就労移行)の見学で無料で相談できます。


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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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