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「うちの子はもうすぐ特別支援学校の高等部を卒業する。でも、就労継続支援A型やB型、一般就労…どれが合っているのかわからない」——そんな不安を抱えていませんか?特別支援学校卒業後の進路の選択肢は複数あり、お子さんの特性・体力・希望によって最適解は変わります。この記事では、家族として知っておきたい各選択肢の条件・収入・定着の実態と、卒業前から始めたい準備の流れを時系列でまとめました。
結論・要点まとめ
特別支援学校卒業後の進路の主な選択肢は「一般就労(障害者雇用)」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「進学(専攻科など)」の4つです。どれが合うかは、お子さんの体力・コミュニケーション・作業の安定度・収入ニーズによって異なります。卒業後すぐに一般就労が難しい場合でも、段階的に移行できる仕組みがあるため、「最初の選択肢がすべてではない」という視点が大切です。まずは在学中から実習を積み重ね、複数の場を体験することが選択の精度を高めます。
4つの選択肢を比較して知る
特別支援学校卒業後の進路を考える際、まず4つの選択肢の全体像を把握しておきましょう。以下の表で大まかな違いを確認してください。
| 選択肢 | 雇用契約 | 収入の目安 | 支援の手厚さ |
|---|---|---|---|
| 一般就労(障害者雇用) | あり | 原則として最低賃金以上の賃金 | 職場による |
| 就労継続支援A型 | あり | 原則として最低賃金以上の賃金(令和6年度の全国平均賃金月額は91,451円。地域や勤務時間などにより差があります) | 手厚い |
| 就労継続支援B型 | なし | 工賃(令和6年度の全国平均工賃月額は24,141円。事業所や利用日数などによって差があります) | 最も手厚い |
| 進学(専攻科・大学等) | なし | 基本なし(奨学金等は別途) | 学校による |
※収入・工賃の数値は年度・地域・事業所によって異なります。詳細は各事業所や学校の進路担当にご確認ください。
一般就労(障害者雇用)
企業と雇用契約を結び、給与を受け取って働く形です。特別支援学校高等部では、企業等への就職を希望する生徒に対して、企業での実習や進路相談などを行いながら就職につなげている学校もあります。障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度により、一定規模以上の事業主には、常用雇用する労働者に占める障害者の割合を法定雇用率以上とする義務があります。2026年7月1日以降、民間企業の法定雇用率は2.7%で、常用雇用労働者37.5人以上の事業主が対象です。
出典:厚生労働省「事業主の方へ-障害者雇用率制度」
一般就労を目指す際は、本人の得意・不得意や体調、勤務時間、仕事内容、必要な配慮などを踏まえて、自分に合う職場を検討することが大切です。特別支援学校では、在学中から企業実習などを通じて働く力や職場との相性を確認しながら就職を目指す取組が行われています。
なお、「特別支援学校高等部卒業者の1年後の職場定着率は約7〜8割」とする全国一律の公的統計は確認できません。参考として、障害者職業総合センターの調査では、一般企業に就職した障害者のうち、障害者求人を通じて就職した人の1年後の職場定着率は70.4%でした。ただし、この数字は特別支援学校卒業者に限定したものではありません。
出典:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、障害福祉サービスでありながら、原則として事業所と雇用契約を結んで働く「雇用型」のサービスです。一般企業等で働くことが難しい方が、事業所から必要な支援を受けながら、仕事に必要な知識や能力を身につけていきます。対象となるのは、企業等への就労が困難で、雇用契約に基づいて継続的に働くことが可能な方です。原則として65歳未満が対象ですが、一定の要件を満たす場合は65歳以上でも継続利用できます。また、特別支援学校を卒業して就職活動を行ったものの、企業等への雇用に結びつかなかった方も対象者の例として示されています。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
特別支援学校卒業後、「すぐに一般企業で働くことには不安があるものの、雇用契約のもとで働く経験を積みたい」と考える場合には、本人の状態や希望、対象要件を踏まえてA型の利用を検討することもできます。仕事内容や勤務時間、支援体制、賃金、職場の雰囲気などは事業所によって異なります。利用を検討する際は、複数の事業所を見学し、自分に合った仕事内容や支援を受けられるか確認するとよいでしょう。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばず、一般企業等で働くことが難しい方に対して、生産活動などの機会や、就労に必要な知識・能力の向上に向けた支援を提供する障害福祉サービスです。雇用契約に基づく賃金ではなく「工賃」が支払われるため、原則として最低賃金法の適用対象にはなりません。体調や障害特性などから、一般就労やA型で働くことが難しい場合に、本人の状況に応じて利用を検討できます。
厚生労働省の資料によると、令和6年における就労継続支援B型のサービス利用終了者のうち、一般就労へ移行した人の割合は11.8%でした。
出典:厚生労働省「一般就労への移行者数・移行率の推移(事業種別)」
ただし、この割合はB型の全利用者に占める割合ではなく、その年にサービス利用を終了した人を分母とした数値です。また、事業所によって一般就労への移行実績や支援内容は異なるため、将来的に一般就労やA型への移行を希望している場合は、見学時に移行実績や支援内容を確認するとよいでしょう。
進学(専攻科・大学・専門学校)
特別支援学校高等部卒業後には、特別支援学校の専攻科や、大学・短期大学・専門学校などへ進学する選択肢もあります。特別支援学校の専攻科は、視覚障害・聴覚障害のある生徒を対象とする学校を中心に設置されており、知的障害・肢体不自由・病弱などを対象とする専攻科もありますが、設置校や募集人数は限られています。
出典:文部科学省「特別支援教育ワーキンググループ参考資料集」
「社会に出る前にもう少し学びたい」「専門的な知識や技能を身につけたい」といった希望がある場合には、本人の学力や障害特性、将来の進路を踏まえて進学を検討することもできます。大学・専門学校等への進学を検討する場合は、入試条件だけでなく、障害学生への支援体制や合理的配慮の内容についても事前に確認するとよいでしょう。
「うちの子にはどれが合うか」を判断する3つの軸
特別支援学校卒業後の進路を選ぶとき、「どこが評判がいいか」より「うちの子の今の状態に合っているか」を優先することが重要です。判断の軸として次の3点を整理してみましょう。
軸1:体力・通所の安定度
毎日決まった時間に通所・出勤できるかどうかは、進路選択の大前提です。体調が波打ちやすい場合はB型から始め、安定してきたらA型・一般就労を検討するという段階的な考え方が現場ではよく用いられます。在学中の出席状況や、学校実習での皆勤率なども一つの参考になります。
軸2:指示の理解とコミュニケーション
「口頭の指示をどの程度理解できるか」「困ったときに自分から助けを求められるか」は、一般就労での定着に直結します。一般就労では支援者が常にそばにいるわけではないため、ある程度の自己発信力が求められます。A型・B型では支援者が身近にいるため、この点のハードルは下がります。
軸3:収入ニーズと家庭の状況
将来的にどの程度の収入が必要か、障害年金などの公的制度を利用できるかどうかも、進路を考えるうえで重要なポイントです。障害基礎年金2級の年金額は、令和8年度(2026年度)は年額847,300円(月額換算約70,608円)です(昭和31年4月2日以後生まれの場合・子の加算を除く)。
出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」
ただし、障害年金は障害の状態や初診日、保険料納付要件などによって受給の可否が決まります。また、20歳前の傷病による障害基礎年金には本人の所得による支給制限があります。B型の工賃だけでは生活費をまかなうことが難しい場合には、障害年金や生活保護など利用できる制度がないか、市区町村の障害福祉担当窓口や年金事務所などに相談しましょう。
卒業前から始めたい、家族として動くべき時系列
特別支援学校卒業後の進路は、3年生の秋冬に慌てて決めるのではなく、できれば2〜3年かけて準備を積み重ねることが理想です。以下は一般的な流れの目安例です(学校・地域・お子さんの状況によって異なります)。
- 高等部1〜2年生:学校主催の実習・職場見学に積極的に参加し、「どんな環境が合うか」の情報を集める。相談支援専門員への相談を始める。
- 高等部2年生の秋〜冬:事業所や企業の体験実習を複数経験する。進路希望を学校の担任・進路担当と共有し、サービス等利用計画の作成を開始する。
- 高等部3年生の春〜夏:本実習(長期実習)に入り、事業所・企業の受入れ可否を確認。A型・B型の場合は利用申請の手続き(市区町村の障害福祉窓口)を進める。
- 高等部3年生の秋〜卒業まで:進路を確定させ、必要な受給者証の取得・雇用契約の締結などを完了させる。就労定着支援の利用も検討する。
家族として特に大切なのは、「学校任せにしない」という姿勢です。担任や進路担当との面談だけでなく、相談支援専門員や地域の基幹相談支援センターにも早めに相談の窓口を開いておくと、選択肢が広がります。
現場からのひとこと
就労支援の現場でよくあるのが、「卒業直前に初めて相談に来た」というケースです。事業所には定員があり、希望するA型やB型がすぐに空いているとは限りません。特に人気の事業所は数ヶ月〜1年待ちになることもあります。「高等部3年生の夏までに体験実習を終わらせる」くらいのペースで動くと、選択肢が確保しやすくなります。
また、「最初の進路がすべてではない」という点も強調したいポイントです。B型から始めてA型・一般就労へ移行したお子さんも、逆に一般就労から体調を崩してB型に変更し安定したお子さんも、どちらも珍しくありません。家族は「この選択が正解だったか」と自分を責めるより、「今の状態に合わせて柔軟に見直す」という姿勢で伴走していただけると、お子さんも動きやすくなります。
よくある質問
Q1. 特別支援学校を卒業したら、就労継続支援を使うのに手帳は必要ですか?
就労継続支援A型・B型を利用するために、障害者手帳が一律に必須となっているわけではありません。市区町村への利用申請後、障害の種類に応じた書類などによって障害福祉サービスの対象者であることを確認し、本人の状況やサービスの必要性などを踏まえて支給決定が行われます。支給決定後に「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
出典:厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領」
たとえば精神障害の場合は、精神障害者保健福祉手帳のほか、障害年金の証書、自立支援医療受給者証(精神通院医療)、医師の診断書などによって対象者であることを確認できる場合があります。必要となる書類は障害の種類や本人の状況によって異なるため、市区町村の障害福祉担当窓口に確認しましょう。
なお、2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する場合は、原則として事前に「就労選択支援」を利用する仕組みとなっています。特別支援学校等の卒業後にB型の利用を希望する場合は、在学中に就労選択支援を利用する取扱いが示されています。
出典:厚生労働省「特別支援学校等における取扱いについて」
Q2. A型とB型、どちらを選んでも後から変えられますか?
はい、変更は可能です。ただし、新しい事業所に空きがあることと、市区町村での利用変更手続きが必要になります。「まずB型で生活リズムを整えてからA型へ」という段階的な移行は現場でもよく見られるルートです。焦らず本人の状態に合わせて検討してください。
Q3. 学校の先生だけに任せていれば大丈夫ですか?
担任・進路担当の先生は大切なパートナーですが、学校外の福祉サービスの情報や地域の事業所の実態は、相談支援専門員や基幹相談支援センターのほうが詳しいことも多いです。学校・福祉・家族の3者が連携することで、選択肢の質が上がります。
Q4. 一般就労を希望しているが、在学中に就職活動の練習はできますか?
特別支援学校高等部では、企業等への就職を希望する生徒に対して、企業での職場実習や進路相談などを行いながら、卒業後の就職を目指す取組が行われています。学校によっては、模擬面接や履歴書作成など、就職活動に向けた練習を行っている場合もあります。
出典:JEED「就労支援機関-特別支援学校」
また、卒業後に就労移行支援を利用し、就労に必要な訓練や職場体験、求職活動などの支援を受けながら一般就労を目指す方法もあります。就労移行支援の標準利用期間は2年間です。標準利用期間を超えてさらに利用する必要がある場合には、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められれば、最大1年間の更新が可能です(原則1回)。
出典:厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について」
在学中に就職を目指すか、卒業後に就労移行支援を利用するかは、本人の希望や準備状況などを踏まえて、学校の進路担当者や相談支援専門員などと相談しながら検討するとよいでしょう。
Q5. 子どもが「何もしたくない」と言っている場合、どうすればいいですか?
卒業後の環境変化に対する不安や疲れが、そういった言葉として出てくることは珍しくありません。まずは本人の気持ちを否定せず聞くことから始めましょう。焦って進路を詰め込もうとすると逆効果になることもあります。在学中から通所の練習ができる事業所や、生活介護サービスなど福祉的なゆとりのある選択肢もあります。支援者・主治医とも相談しながら、本人のペースを優先してください。
まとめ|次にやること
特別支援学校卒業後の進路の選択肢は、一般就労・A型・B型・進学の4つが主なものです。「どれが正解か」ではなく、「今のお子さんの状態に何が合うか」を軸に、体力・コミュニケーション・収入ニーズの3点で整理することが出発点になります。
- ✅ まず学校の進路担当に現状と希望を共有する
- ✅ 相談支援専門員や基幹相談支援センターに早めに連絡してみる
- ✅ 高等部2年生までに複数の事業所・企業の体験実習を経験できるよう調整する
- ✅ 最初の選択を「変えてもいい」という前提でいる
特別支援学校卒業後の進路は、卒業のタイミングが「ゴール」ではなく「スタート」です。家族が焦らずに情報を集め、お子さんの声に耳を傾けながら伴走することが、長期的な安定につながります。
「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。
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この記事の監修者
監修:雨宮久美子
サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」
就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。


