精神障害者の雇用定着を高めるには?職場の配慮と本人の工夫を支援現場から解説

精神障害者の雇用定着を高めるには?職場の配慮と本人の工夫を支援現場から解説 障害者雇用の基礎知識

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「せっかく就職できたのに、長く続けられるか不安」「職場にどう配慮をお願いすればいいかわからない」——精神障害者の雇用定着に悩んでいるのは、あなただけではありません。就職後の「定着」こそが、障害のある人の働き続ける生活を支える最重要テーマのひとつです。この記事では、精神障害者の雇用定着を高めるために、職場側が実践できる配慮と、あなた自身ができる工夫の両面を、支援現場の視点からわかりやすく解説します。企業の担当者にも、働く本人にも役立てていただける内容です。

結論・要点まとめ

精神障害者の雇用定着を高めるカギは、「早期の環境整備」「継続的なコミュニケーション」「外部支援の活用」の3点です。職場側の配慮と本人の自己管理の工夫、そして就労支援機関との連携がそろって初めて、長期的な定着が実現しやすくなります。どれかひとつだけでは難しく、三者が協力し合う仕組みを作ることが大切です。

なぜ精神障害者の雇用定着は課題になりやすいのか

定着率の比較

精神障害者の雇用定着が難しいとされる背景には、複数の要因が絡み合っています。就職できても短期間で離職してしまうケースが多く、企業・本人ともに「定着」をいかに実現するかに頭を悩ませています。

離職率の実態

JEED(障害者職業総合センター)の調査では、一般企業に就職した精神障害者の職場定着率は、就職3か月後で69.9%、1年後で49.3%でした。同じ調査における1年後の定着率は、身体障害者60.8%、知的障害者68.0%、発達障害者71.5%となっており、精神障害者は比較的低い結果となっています。(出典:JEED「障害者の就業状況等に関する調査研究」2017年)就職後の早い段階から一定数が離職していることが分かるため、仕事内容や勤務時間の調整、職場での配慮、就労支援機関によるフォローなど、入社後の定着支援も重要です。

離職の主な理由として挙げられるのは、以下のようなものです。

  • 体調や症状の変動による業務への影響
  • 職場の人間関係によるストレス
  • 業務量・業務内容のミスマッチ
  • 配慮や相談ができる窓口がなく孤立した
  • 通勤負担の積み重ね

これらはどれも、事前の対策と継続的なサポートで軽減できる可能性があります。精神障害者の雇用定着を考えるうえで、「問題が起きてから対応する」のではなく、「起きる前に環境を整える」視点が重要です。

精神障害の特性と働くことの関係

精神障害といってもその状態や特性は人それぞれです。調子の良い日と悪い日の波があること、ストレスへの感受性が高い場合があること、服薬管理や通院が必要なこと——こうした日常的な要素が、職場生活に影響することがあります。症状や治療については主治医や専門機関に相談しながら、職場には「働き方」の面で配慮を求めていくことが基本的なアプローチです。

職場側が実践できる配慮:精神障害者の雇用定着を支える環境づくり

職場の配慮4つ

精神障害者の雇用定着を高めるためには、職場環境の整備が欠かせません。ここでは企業・職場担当者が実践しやすい配慮を具体的に紹介します。

① 相談できる窓口・担当者を明確にする

「誰に何を相談すればいいかわからない」という状況は、孤立感を生みやすく、離職の引き金になることがあります。上司や人事担当者など、日常的に話しかけやすい相談窓口を明確にし、定期的な1on1面談などで体調や業務の状況を確認する機会を設けることが効果的です。

② 業務量・ルーティンの安定化

急な業務変更や過度なノルマは、精神的な負荷を高めやすい要因のひとつです。業務内容をできるだけ明確にし、急な変更が必要なときは事前に共有するなど、見通しを持ちやすい環境をつくることが定着につながります。業務量についても、本人の状態に合わせた調整ができるよう柔軟性を持たせることが大切です。

③ 休憩・休暇取得のしやすい雰囲気づくり

体調の変動があるとき、早めに休息を取れることは再悪化の防止につながります。「休みを取りにくい空気」がある職場では、無理をして出続けた結果、大きく体調を崩してしまうケースがあります。有給休暇の取得促進や、必要に応じた短時間勤務の活用など、制度と雰囲気の両面から整備することが重要です。

④ 定着支援機関との連携を活用する

就労定着支援は、2016年の障害者総合支援法改正によって創設され、2018年4月から開始された障害福祉サービスです。(出典:厚生労働省)就労移行支援や就労継続支援A型・B型、生活介護、自立訓練などを利用して一般就労へ移行し、就職後6か月を経過した方などを対象に、3年間、職場定着に向けた支援を行います。支援では、本人との相談を通じて就労に伴う生活面・社会生活面の課題を把握し、企業や医療機関、福祉関係機関などとの連絡調整や、課題解決に向けた支援を行います。就労定着支援事業所などの専門機関と連携し、本人や企業だけで問題を抱え込まない体制をつくることも、安定して働き続けるための選択肢の一つです。

職場側の配慮:場面別チェックリスト
場面 配慮のポイント
入社直後 業務内容・ルールを文書で共有する。相談窓口を明示する
日常業務 急な変更は事前周知。業務量の過不足を定期確認する
体調変動時 早退・休暇を取りやすい雰囲気と制度を整える
中長期 就労定着支援機関と連携し、定期的にフォローアップする

本人ができる工夫:精神障害者の雇用定着を自分で支えるために

本人の工夫4つ

精神障害者の雇用定着のためにできることは、職場側の配慮だけではありません。あなた自身が自分の状態を把握し、適切に発信していくことも、定着を長期化させる重要な要素です。

① 自分のコンディションを「見える化」する

体調の波を記録しておくことは、セルフケアの基本です。睡眠時間・気分・疲労度などを簡単にメモする習慣をつけることで、「調子が落ちてきたサイン」に自分で気づきやすくなります。記録を支援担当者や主治医と共有することで、より適切なアドバイスが受けやすくなります。

② 配慮事項を言語化して職場に伝える

「配慮をお願いしたいけど、なんと言えばいいかわからない」という声はよく聞かれます。まずは「自分が困りやすい状況」と「それに対してあると助かること」を整理してみましょう。たとえば「急な予定変更が苦手なので、変更が生じる場合は前日までに教えてもらえると助かります」のように、具体的に伝えると職場も対応しやすくなります。合理的配慮の申し出については、配慮申し出の例文まとめの記事も参考にしてください。

③ 「困り始めたら早めに相談」の習慣をつける

精神障害者の雇用定着を阻む大きな要因のひとつが、「我慢しすぎること」です。調子が悪くなり始めたときに黙って抱え込むのではなく、担当者や支援機関に早めに声をかけることが、小さな問題が大きくなる前に対処できる可能性を高めます。「相談することは迷惑をかけること」ではなく、「自分を守るための行動」と捉え直すことが大切です。

④ 就労定着支援・ジョブコーチを活用する

外部の就労支援機関の力を借りることも、職場定着を支える方法の一つです。ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援は、障害者本人や事業主、関係機関などからの要請をもとに、本人と事業主双方の同意を得て支援計画を作成し、実施されます。(出典:厚生労働省・JEED)ジョブコーチが職場に出向き、本人に対して仕事の進め方や職場内のコミュニケーションなどを支援するほか、事業主や上司・同僚に対して、障害特性に応じた指導方法や職務・職場環境の調整について助言を行います。また、就労移行支援を経て就職した場合は、就労移行支援事業所から就職後少なくとも6か月以上、職場定着に向けた相談支援を受けることができます。必要に応じて、こうした外部の支援機関と職場が連携しながら、安定して働き続けられる環境を整えていきます。

現場からのひとこと

就労支援の現場では、「入社後3か月が最も山場」と感じることが多くあります。最初の試用期間が終わるころ、業務に慣れてきたと同時に緊張感が解けて体調が揺れ始める方が少なくありません。このタイミングで支援員が職場と本人の間に入り、「職場側に伝わっていない困りごと」と「本人が言い出せずにいる不安」を丁寧に橋渡しすることが、精神障害者の雇用定着を左右する場面だと実感しています。

また、企業の担当者から「どう接すればいいか正直わからない」という声を聞くことも多いです。特別扱いでもなく、無関心でもなく——「必要なことを確認し、対応できることは対応する」というシンプルな姿勢が、お互いにとって一番働きやすい関係を作っていくと感じています。

よくある質問

Q1. 精神障害者の雇用定着率を上げるために、企業が最初にすべきことは何ですか?

A. 入社前・入社直後に「相談窓口の明示」と「業務内容の明文化」を行うことが最も効果的です。「誰に相談すれば良いか」「何をすれば良いか」が明確であるだけで、不安や混乱は大きく軽減されます。また、就労定着支援機関と早期に連携しておくことも重要です。

Q2. 配慮をお願いしたいが、どのタイミングで伝えるのがよいですか?

A. 可能であれば、採用面接の段階や入社前のやり取りの中で伝えておくのが理想です。就職後に状況が変わった場合でも、「最近こういう点で困っています」と早めに伝えることが大切です。面接での伝え方については、障害者雇用の面接でよくある質問と答え方の記事も参考になります。

Q3. 就労定着支援は誰でも使えますか?

A. 誰でも利用できるわけではありません。就労定着支援は、就労移行支援・就労継続支援A型・B型・生活介護・自立訓練などを利用して一般就労へ移行し、就労を継続して6か月を経過した方などが対象です。(出典:厚生労働省)就労に伴う環境の変化によって、日常生活や社会生活上の課題が生じていることなども要件となります。実際に対象となるかどうかは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や就労定着支援事業所などに確認してください。

Q4. 調子が悪い日が続いて、休みがちになってしまっています。どうすればよいですか?

A. まず主治医や支援機関に現状を相談することをお勧めします。職場への伝え方・休み方・復帰の仕方など、一人で判断しようとせず、専門家と一緒に考えることが大切です。「休みがち=定着失敗」ではなく、早期に対処することで立て直せるケースは多くあります。

Q5. 精神障害者を雇用した企業に、助成金などの制度はありますか?

A. はい。精神障害者などをハローワーク等の紹介により継続して雇用する事業主を対象とした「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」があります。また、障害者の職場適応を支援するジョブコーチに関して、「訪問型職場適応援助者助成金」や「企業在籍型職場適応援助者助成金」などの制度があります。助成金ごとに対象者や雇用条件、申請期限などが定められています。特定求職者雇用開発助成金についてはハローワークや都道府県労働局、ジョブコーチに関する助成金についてはJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)などに確認してください。

出典:厚生労働省

まとめ|次にやること

精神障害者の雇用定着を高めるためのポイントを振り返りましょう。

  • 職場側:相談窓口の明示・業務の安定化・就労定着支援機関との連携
  • 本人:コンディションの見える化・配慮の言語化・早めの相談習慣
  • 共通:三者(本人・職場・支援機関)が連携する仕組みを作る

「定着」は就職がゴールではなく、そこからのスタートです。今の職場での困りごとを整理したい方、配慮の伝え方を一緒に考えたい方は、ぜひ就労支援機関や就労定着支援のスタッフに相談してみてください。一人で抱え込まず、使える支援を上手に活用することが、長く働き続けることへの着実な一歩になります。

「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。

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監修者

この記事の監修者

監修:雨宮久美子

サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」

就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。

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