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「高次脳機能障害と診断されたけど、就労移行支援って自分でも使えるの?」「手続きが複雑そうで、何から始めればいいかわからない」——そんな不安を抱えて検索したあなたに向けて、この記事では高次脳機能障害と就労移行支援の関係を、手続きの流れから職場定着のコツまで、支援現場の視点でていねいに解説します。
高次脳機能障害は、脳の損傷によって記憶・注意・遂行機能などに影響が出る状態です。外見からはわかりにくいため「どこに相談すればいいかわからない」「制度の対象になるか不安」という声をよく聞きます。この記事を読めば、就労移行支援を使うための条件・手続きの流れ・利用期間の目安・職場定着で役立つポイントがひとおりわかります。
結論・要点まとめ
まず結論を3点でお伝えします。
- 高次脳機能障害のある方は、一定の要件を満たせば就労移行支援を利用できます。
- 利用には「障害福祉サービス受給者証」の取得が必要で、障害者手帳がなくても申請できるケースがあります。
- 就労移行支援では、高次脳機能障害に特有の記憶・注意・疲労などの課題に合わせた個別プログラムを組むことができます。
高次脳機能障害があっても就労移行支援は使える?
結論からいうと、高次脳機能障害のある方は就労移行支援の対象になります。ただし「高次脳機能障害だから自動的に使える」わけではなく、障害福祉サービスの支給決定を受ける必要があります。
就労移行支援の対象者とは
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく訓練等給付のひとつで、原則として、一般就労を希望する65歳未満の障害のある方のうち、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方が対象です。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)のほか、障害者総合支援法の対象疾病に該当する難病等のある方も、要件を満たせば利用対象となります。
出典:厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」
高次脳機能障害は、疾病や事故による脳の器質的病変によって生じる記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知機能障害で、2026年4月施行の「高次脳機能障害者支援法」でも定義されています。障害者手帳の制度では、高次脳機能障害は障害の程度によって精神障害者保健福祉手帳の対象となる場合があります。また、麻痺や言語障害など一定の身体機能障害が残っている場合には、その障害の程度に応じて身体障害者手帳の対象となることがあります。
出典:厚生労働省「高次脳機能障害 支援者養成研修テキスト」
高次脳機能障害のある方も、一般就労を希望し、就労移行支援の対象要件を満たしたうえで市区町村から支給決定を受ければ、就労移行支援を利用できます。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
利用できるサービスは障害の状態や支援の必要性によって異なるため、居住地の市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所などに確認しましょう。
障害者手帳がなくても利用できる?
就労移行支援の利用に、障害者手帳が一律に必須となっているわけではありません。障害の種類によっては、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書、自立支援医療受給者証、障害年金の証書などによって障害者総合支援法の対象者であることを確認し、市区町村がサービスの必要性などを踏まえて支給決定を行うことで、就労移行支援を利用できる場合があります。
出典:厚生労働省「サービスの利用手続き」
一方で、手帳を取得しておくと障害者雇用枠への応募や各種割引など活用できる場面が広がります。高次脳機能障害で障害者手帳を取得する方法については、別記事「高次脳機能障害で障害者雇用を使うには?」もあわせてご覧ください。
就労移行支援を使うまでの手続きの流れ
「手続きが複雑そう」と感じるかもしれませんが、大きな流れをつかめば一つひとつは難しくありません。以下のステップで進めていきます。
ステップ1:相談窓口に連絡する
まずは以下のいずれかに連絡してみてください。
- 市区町村の障害福祉担当窓口
- 指定特定相談支援事業所(相談支援専門員が無料でサポートしてくれます)
- 利用を検討している就労移行支援事業所に直接問い合わせ(見学・体験も可能)
高次脳機能障害に関しては、各都道府県等に、高次脳機能障害に関する専門的な相談支援を行う窓口が整備されており、高次脳機能障害者支援センターや支援拠点機関などに相談することができます。
出典:国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害に関する相談窓口の情報」
ステップ2:支給申請と受給者証の取得
市区町村の窓口で「障害福祉サービス支給申請」を行います。申請には医師の診断書や意見書が必要になることが多いため、主治医に事前に相談しておくとスムーズです。審査を経て「障害福祉サービス受給者証」が交付されれば、就労移行支援の利用が正式に認められます。
ステップ3:事業所の見学・体験利用
受給者証の取得前後を問わず、就労移行支援事業所の見学や体験利用は多くの場合可能です。高次脳機能障害のある方の場合、以下のような点を事業所に確認しておくと安心です。
- 高次脳機能障害のある利用者の支援実績があるか
- 記憶・注意・疲労管理などの課題に対応したプログラムがあるか
- 医療機関や相談支援専門員との連携体制があるか
- 休憩スペースや訓練時間の調整が柔軟にできるか
ステップ4:サービス等利用計画の作成・利用開始
相談支援専門員が「サービス等利用計画」を作成し、事業所との利用契約を結んで訓練がスタートします。計画には目標とする就労先の方向性や、週何日・何時間通所するかなどが盛り込まれます。
就労移行支援の利用期間と高次脳機能障害の場合の目安
就労移行支援の標準利用期間は2年間です。標準利用期間を超えてさらに利用する必要がある場合には、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、最大1年間の支給決定期間の更新が可能です(原則1回)。
出典:厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について」
高次脳機能障害のある方についても利用期間の基本的な考え方は同じです。障害特性や訓練の進み具合、一般就労に向けた支援の必要性などを踏まえ、2年間を超えて継続利用する必要があるかどうかが個別に判断されます。
高次脳機能障害では時間をかけた訓練が有効なケースも
高次脳機能障害では、体調や認知機能の回復状況によって通所ペースを調整しながら進めることが一般的です。最初から週5日フルで通所するのではなく、週1〜2日から始めて少しずつ増やしていく「段階的な通所」を取る方も多くいます。2年という期間を「焦って消化するもの」ではなく、「自分のペースで力をつける期間」として活用することが大切です。
また、訓練の内容は記憶の補助ツール(メモ・スマートフォンの活用など)の使い方、スケジュール管理、疲労のセルフモニタリングなど、高次脳機能障害に特有の課題に対応したものを組み込むことができます。主治医や支援スタッフと相談しながら進めていきましょう。
就労後の職場定着——高次脳機能障害で意識したいポイント
就労移行支援の目的は就職で終わりではなく、職場に定着して長く働き続けることです。高次脳機能障害のある方が職場で安定して働くために、現場でよく活用されているポイントをご紹介します。
「見えない障害」を職場に伝えるための工夫
高次脳機能障害は外見からわかりにくいため、職場の上司や同僚に理解されにくいことがあります。就労移行支援では、自分の特性を職場にわかりやすく伝える「セルフアドボカシー(自己権利擁護)」の練習も行います。たとえば「メモを取ることで業務ミスを防げます」「一度に複数の指示は難しいので、一つずつお願いできますか」といった具体的な伝え方を準備しておくと、職場との摩擦を減らせます。
就労移行支援事業所による職場定着支援の活用
就職後も、就労移行支援事業所は、利用者が就職した日から少なくとも6か月以上、障害者就業・生活支援センターなどの関係機関と連携しながら、職場定着に向けた相談支援を行うこととされています。
出典:厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」
さらに、就労移行支援などを利用して一般就労した後、6か月を経過し、就労に伴う生活面・社会生活面の課題がある場合には、「就労定着支援」を利用できることがあります。就労定着支援の利用期間は3年間で、企業や医療機関などとの連絡調整や、日常生活・社会生活上の課題についての相談・助言などを受けることができます。
出典:厚生労働省「就労定着支援」
就職後も必要な支援機関とつながり、仕事や生活上の困りごとを早めに相談できる環境を整えておくことが、職場定着を支えるポイントになります。
疲労管理と「休み方」の練習
高次脳機能障害では、脳の疲労が蓄積すると認知機能が低下しやすい傾向があります(詳細は主治医にご確認ください)。就労移行支援の訓練中から、自分の疲れに気づく練習(セルフモニタリング)と、適切な休憩の取り方を身につけておくことが職場定着に役立ちます。
現場からのひとこと
就労移行支援を利用する高次脳機能障害のある方の中には、「自分がサービスを使っていいのかどうか迷った」とおっしゃる方が少なくありません。症状が軽く見えても、長時間の集中が難しかったり、新しい環境でのストレス耐性が落ちていたりと、仕事場では様々な困りごとが出てきます。支援員として感じるのは、「早めに相談窓口につながった方が、その後の選択肢が広がる」ということです。
また、ご家族から「本人が就労移行支援への通所を嫌がっている」という相談を受けることもあります。その場合は無理に促すのではなく、まず見学だけ、体験利用だけという形で「場所に慣れる」ことから始めるのが実態に合っています。本人のペースを尊重しながら、支援チームで丁寧に関わることが、結果として安定した就労につながっていきます。
よくある質問
Q1. 就労移行支援の利用中、費用はかかりますか?
就労移行支援は障害福祉サービスのため、利用者負担には所得に応じた月額上限が設定されています。生活保護世帯・市町村民税非課税世帯は0円、市町村民税課税世帯のうち一定の所得以下の場合は月額9,300円、それ以外は月額37,200円が上限です。
出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」
実際の自己負担額は所得区分やサービスの利用状況によって異なります。利用を検討する際は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認してください。
Q2. 就労移行支援を使いながら、医療リハビリと並行できますか?
はい、多くの場合は並行して利用できます。ただし、医療リハビリの頻度や体調によって通所日数を調整する必要が出ることもあります。就労移行支援事業所、医療機関、相談支援専門員が連携して計画を立てることが重要ですので、それぞれに事前に相談しておきましょう。
Q3. 高次脳機能障害に詳しい就労移行支援事業所を選ぶには?
見学・体験の際に「高次脳機能障害のある方の支援実績があるか」「担当スタッフの専門研修の有無」「医療機関との連携体制」を直接確認するのが確実です。地域の高次脳機能障害支援拠点機関や相談支援専門員に、地域の情報を聞いてみるのも一つの方法です。
Q4. 就労移行支援の2年間では足りないと感じたら?
就労移行支援の標準利用期間は2年間ですが、その期間を超えてさらに利用する必要がある場合には、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められれば、最大1年間の支給決定期間の更新が可能です(原則1回)。
出典:厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について」
また、本人の希望や就労能力、支援の必要性によっては、就労継続支援A型・B型など別の就労系障害福祉サービスを検討することもできます。ただし、A型・B型にはそれぞれ対象要件があり、市区町村の支給決定が必要です。相談支援専門員や利用中の事業所、市区町村の障害福祉担当窓口と相談しながら、今後の支援方法を検討しましょう。
Q5. 就職後に状態が悪化してしまったらどうすればいいですか?
就職後も就労移行支援事業所や就労定着支援のスタッフに相談できます。状態の変化については、まず主治医や専門機関に相談することが最優先です。支援者と職場が連携して早めに対応できる体制を整えておくことが、再就職リスクを減らすことにつながります。
まとめ|次にやること
この記事では、高次脳機能障害と就労移行支援について、利用できる条件・手続きの流れ・期間の目安・職場定着のポイントを解説しました。最後に、次に取るべきアクションを整理します。
- ✅ まず相談:市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、または都道府県の高次脳機能障害支援拠点機関に連絡してみましょう
- ✅ 事業所を見学:見学・体験利用は無料でできる場合がほとんどです。複数の事業所を比べてみてください
- ✅ 主治医に相談:支給申請に必要な診断書・意見書の準備について、主治医に早めに話しておきましょう
- ✅ 焦らない:就労移行支援は最大2年間(延長あり)使えるサービスです。自分のペースで進めることが大切です
一人で抱え込まず、支援のネットワークをうまく活用しながら、あなたに合った働き方を一緒に見つけていきましょう。
「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。
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この記事の監修者
監修:雨宮久美子
サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」
就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。


