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「うちの子、いつになったら正社員になれるんだろう」「パートナーがずっと契約社員のまま。何かできることはないかな」——障害者雇用と正社員というテーマで検索したあなたは、こんな気持ちを抱えているのではないでしょうか。本人ではなく、家族の立場から何ができるかを知りたい。でも、焦らせてもいけない。どう関わればいいかわからない。この記事では、そんな家族の悩みに、場面別の言葉かけ・情報収集・同行支援のシナリオで応えます。
伝えるときの基本の3ステップ
障害者雇用で正社員を目指す本人をサポートするとき、家族が意識したい基本の流れがあります。順番を間違えると「急かされている」「信じてもらえていない」と本人が感じてしまうことがあるため、まずこの3ステップを頭に入れておきましょう。
- 本人の気持ちを聴く(聞くではなく、聴く)
「正社員になりたいと思っている?」と聞く前に、「今の職場はどう?」「働いていて楽しいことある?」と現状から始めます。本人がどう感じているかを知らずに情報提供や提案をしても、空回りしやすくなります。 - 家族が先に情報を整理しておく
「こんな制度があるらしいよ」と断片情報を渡すより、家族側がある程度まとめてから共有するほうが本人の負担を減らせます。ただし、「答え」を押しつけるのではなく「一緒に考える材料」として渡すことが大切です。 - 本人のペースに合わせて「待つ」時間をつくる
正社員登用のタイミングは本人の体調・職場の状況・支援機関の動き、さまざまな要素が絡みます。家族が焦るほど本人はプレッシャーを感じやすくなります。「急がなくていい」というメッセージを言葉と行動で示し続けることが、長い目で見た最大のサポートになります。
場面1:本人が「正社員になれない」と落ち込んでいるとき
職場の同期が正社員になったとか、契約更新を繰り返していることへの焦りから、本人が落ち込んでいる場面です。家族としては励ましたい気持ちが先走り、かえって本人を追い詰めてしまうことがあります。
言いづらい例(本人が「また責められた」と感じやすい言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「やっぱり正社員じゃないと将来が不安だよ」
- 「もっと積極的にアピールしてみたら?」
- 「同じ障害のある人でも正社員になっている人はいるんだから」
伝わりやすい例(本人が「わかってもらえた」と感じやすい言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「今の職場でちゃんと続けられていること、それだけで十分すごいと思ってる」
- 「正社員にこだわらなくていいよ。ただ、もしなりたいなら一緒に考えたい」
- 「焦らなくていいよ。あなたのペースに合わせる」
落ち込んでいるときに必要なのは「解決策」よりも「安心」です。まず気持ちを受け止めてから、本人が「話したい」と感じたときに情報を共有する順番を守りましょう。
場面2:正社員登用制度について本人に伝えたいとき
「障害者雇用でも正社員になれる」という情報を家族が先に知った。でも、どう伝えればいいか迷う——という場面です。情報提供は大切ですが、渡し方を間違えると「なんで知らなかったんだろう」という自己否定につながる場合もあります。
言いづらい例(情報の押しつけになりやすい言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「障害者雇用でも正社員になれる会社はたくさんあるんだから、もっと調べてみなよ」
- 「就労移行支援に行けばキャリアアップできるって書いてあったよ」
- 「この求人、正社員登用あるって書いてあるけど、なんで応募しないの?」
伝わりやすい例(「一緒に考えよう」というスタンスの言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「ちょっと気になる情報があったんだけど、聞いてみてもいい?」
- 「障害者雇用で正社員登用をしている会社もあるみたい。参考程度に一緒に見てみない?」
- 「急いで決めなくていい。ただ、こういう選択肢もあることだけ知っておいてほしくて」
なお、障害者雇用における正社員登用制度の有無や登用条件、実際の登用実績は企業・求人によって異なります。ハローワークの求人票では、「正社員登用の有無」に加えて「正社員登用の実績(過去3年間)」が記載される場合があります。
出典:ハローワークインターネットサービス「求人情報項目一覧」
そのため、「正社員登用あり」と記載されていても、一定期間の勤務、勤務成績、スキル、社内評価など、登用に必要な条件は企業によって異なります。応募前には求人票の登用実績や特記事項を確認し、不明な点はハローワークの障害のある方向け専門窓口や就労支援機関、応募先企業に確認するとよいでしょう。
場面3:支援機関(就労支援員・相談支援専門員)への同行を提案するとき
「支援者に相談してみたら?」と言っても動かない。かといって勝手に家族だけで動くのも…という場面です。本人が支援機関を遠ざけている場合は、その理由を知ることが先決です。「使いにくかった」「相性が悪かった」という過去の経験が影響していることもあります。
言いづらい例(本人に「押しつけられた」と感じさせやすい言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「就労支援員さんに相談しなよ。プロなんだから」
- 「私が代わりに話を聞いてきてあげようか」
- 「なんで相談に行かないの?もったいないよ」
伝わりやすい例(本人の意思を尊重しながら提案する言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「就労支援員さんに一度だけ話を聞いてもらうだけでもいいと思う。一緒に行こうか、それとも一人で行く?」
- 「私も一緒に行っていい?話しにくかったら横でメモするだけにするから」
- 「無理に行かなくていい。でも、もし気持ちが変わったら教えて」
家族が同行する場合、本人が主役の場であることを忘れずに。家族が先に話しすぎたり、本人の発言を先取りしたりすると、支援者との信頼関係を築く機会を奪ってしまうことがあります。同行する場合は「本人の言葉を引き出すサポート役」に徹することがポイントです。
場面4:職場の上司や人事へ「正社員を目指したい」と相談したいと言ってきたとき
本人が「職場で正社員登用について聞いてみたい」と言い出した場面です。これはとても大切な一歩。家族はその気持ちを応援しつつ、事前の準備を一緒に整えるサポートができます。
言いづらい例(本人の意欲をそいでしまいやすい言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「障害者雇用枠だと難しいんじゃない?」
- 「断られたらショックだよ。もう少し様子を見たら?」
- 「就労支援員さんに許可もらってから動いた方がいいんじゃない?」
伝わりやすい例(背中を押しながら準備を整える言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「いい一歩だと思う。どんなふうに話すか、一緒に考えてみようか」
- 「就労支援員さんにも事前に相談しておくと、心強いかもしれない」
- 「うまくいかなくても、聞いたこと自体はすごく意味があると思うよ」
職場で困っていることや必要な配慮について相談することは、遠慮する必要のない大切なコミュニケーションです。障害者雇用促進法では、事業主に対して、障害のある労働者が職務を円滑に遂行できるよう、その障害特性に応じた合理的配慮を提供することが義務付けられています。ただし、事業主に過重な負担を及ぼす場合は除かれます。また、労働者は職場で支障となっている事情について、自ら事業主に申し出ることができます。
出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
合理的配慮は、一方的に「お願いする」だけのものではなく、本人が困っていることや希望を伝え、事業主と話し合いながら具体的な対応を検討していく仕組みです。「お願いしていいのだろうか」と本人が遠慮している場合は、「法律に基づいて相談できること」と伝えることが後押しになります。
場面5:なかなか動けない本人を「待つ」のがつらくなってきたとき
サポートしたいのに、本人が動かない。情報を渡しても「うん」と言うだけで何も変わらない。そんな状況が続くと、家族自身が疲弊してしまいます。これは、障害者雇用や正社員というテーマに関わらず、支える側が必ずぶつかる場面です。
言いづらい例(家族の焦りが伝わってしまう言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「いつまでこのままなの?」
- 「私だって心配しているのに、なんで動いてくれないの」
- 「せっかく調べたのに、もったいない」
伝わりやすい例(家族自身の気持ちを正直に、でも穏やかに伝える言葉)
(想定会話例です。特定の実在する人物の発言ではありません)
- 「正直、私も心配することがある。でも、あなたのことを信じているから待てる」
- 「焦らせたくないんだけど、一緒にできることがあれば教えて」
- 「私も疲れることがある。支援者の人に私も相談してみてもいいかな」
「待つ」ことがつらくなったときは、家族自身が相談先を利用することも検討してください。障害福祉に関する相談は、市区町村の障害福祉担当窓口や、市区町村から委託された相談支援事業所、地域に設置されている基幹相談支援センターなどで受け付けています。
出典:厚生労働省「障害のある人に対する相談支援について」
また、地域によっては障害のある本人の家族で構成される家族会や当事者団体などが、家族向けの相談や交流の場を設けている場合があります。利用できる相談先は地域によって異なるため、市区町村の障害福祉担当窓口に確認するとよいでしょう。
伝えたあとのフォロー
言葉かけをした後、本人の反応が薄くても焦らないことが大切です。家族からの言葉はすぐに表面に出てこなくても、じわじわと本人の中に残ります。以下の点を意識してフォローしましょう。
- 1〜2週間後に「あのとき話したこと、どう思った?」と軽く触れる——すぐ答えを求めず、考える時間を与えたうえで再度対話する
- 本人が動いたときは「正しい選択」を評価しない——「やっとやったね」ではなく「話してくれてよかった」「一緒に考えられてよかった」という言葉を選ぶ
- 家族だけで抱え込まず、支援者との情報共有を続ける——就労定着支援や相談支援専門員がいる場合は、家族としての気持ちや気になる変化を定期的に伝えておくと、支援の質が上がりやすくなります
現場からのひとこと
就労支援の現場で家族の方から相談を受けるとき、よく聞かれるのが「正社員を目指させた方がいいですか?」という問いです。実際のところ、正社員かどうかよりも「本人が安心して長く働き続けられるかどうか」が先に来ることがほとんどです。障害者雇用における正社員登用は少しずつ広がっていますが、企業ごとに制度や運用がまったく異なります。「正社員登用あり」と書いてある求人でも、実際の登用実績を確認することがとても重要です。
また、家族の方が焦って情報収集をしすぎると、本人に「自分はまだ足りない」というメッセージが届いてしまうことがあります。家族が落ち着いていること、待てること、それ自体が支援です。ご自身の気持ちが限界に近づいているなと感じたら、ぜひ支援者に「家族として相談したい」と声をかけてください。
まとめ
障害者雇用で正社員を目指す本人を支える家族のサポートは、「情報を渡すこと」よりも「安心できる関係をつくること」が土台になります。この記事で紹介した場面別の言葉かけを参考に、本人のペースに寄り添いながら関わってみてください。
- 落ち込んでいるときは解決より「安心」を先に
- 情報は「答え」ではなく「材料」として渡す
- 支援機関への同行は本人が主役、家族はサポート役に徹する
- 職場への申し出は合理的配慮として本人の権利であることを伝える
- 待つのがつらくなったら、家族自身も相談窓口を使っていい
障害者雇用と正社員というテーマは、本人だけでなく家族のサポートのあり方が大きく影響します。焦らず、でも諦めず、一緒に考え続けることが、長い目で見た最良のサポートです。
「読んだだけでは判断がつかない」というときは、人に相談するのが早道です。
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この記事の監修者
監修:雨宮久美子
サービス管理責任者
就労継続支援A型・就労移行支援
多機能型事業所「はたらく森」
就労継続支援A型・就労移行支援の多機能型事業所「はたらく森」にて、障害のある方の就労支援に従事。現場での支援経験をもとに、記事内容の正確性を確認しています。


